はまなす行政書士事務所

行政書士 角屋敦士

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79. 死後事務委任契約を作る前に――葬送・住居・携帯・SNS・ペットまで仕事を棚卸しする

専門記事・実務研究 79|遺言・相続・終活
作成・公的資料確認日:2026年9月29日

「亡くなった後のことは全部お願いしたい」という希望を、そのまま一つの契約条項にしても、受任者が動けるとは限りません。葬送、住居、携帯電話、SNS、ペットでは、急ぐ時期も必要な権限も違います。死後事務委任契約を作る前に、仕事・窓口・費用・権限を分けて整理します。

遺言・相続・死後事務の役割を先に分ける

死後事務委任は、死亡後に行ってほしい事務を契約で定めるものです。遺産の取得者を決める遺言や、相続人による財産承継の手続を、これだけで置き換えることはできません。受任者が当然に遺言執行者や相続財産の管理者になるわけでもありません。

民法では委任者の死亡は委任終了事由の一つとされているため、死亡後の事務を依頼する契約では、死後にも履行する趣旨、対象事務、権限、終了と精算を明確に設計します。生前の財産管理、任意後見、死後事務を一括して「何でも代理できる」と説明しないことが出発点です。

葬送・住居・デジタル契約・ペットを具体化する

葬送では、死亡の連絡を受ける人、搬送、葬儀社、火葬・納骨、宗教上の希望、費用の上限を確認します。死亡届の届出人になれる範囲は戸籍法等の定めによるため、死後事務を受任しただけで当然に届出人になれるとは限りません。必要な届出人と提出協力の段取りも確認します。

賃貸住宅では、死亡だけで契約が当然に終了するとは限りません。賃貸借の終了、鍵の返却、残置物の処理を分け、相続人や貸主との関係を確認します。本人の物だから全て処分してよいとせず、財産価値や思い出の品、第三者所有物、保存すべき書類を区別します。

携帯・SNS等は、契約先、解約又は追悼アカウント等の希望、相続手続に必要な情報の保全を一覧にします。受任者が本人になりすまして自由にログインできる契約ではありません。ペットは、死亡直後の一時預かり先、長期の引受人の同意、通院情報、飼育費、引受不能時の代替先まで確認します。

急ぐ事務と、確認後に行う事務を分ける

死亡直後の搬送やペットの給餌と、住居の一括処分や各種アカウント削除を同じ優先順位にしません。例えば、携帯電話を先に解約すると、契約先を探す手掛かりや確認手段が失われることがあります。必要な情報の保全と契約先への確認後に進める事項として整理します。

当事務所が提案する棚卸し欄は、「事務」「着手のきっかけ」「実施者」「連絡先」「必要書類・権限」「費用」「完了の証拠」「引継先」です。葬儀社が担当する作業と受任者が調整する作業を分ければ、同じ費用を二重に見積もることも防ぎやすくなります。

想定例:独居・賃貸・猫一匹の場合

例えば、一人暮らしで賃貸住宅に住み、猫を飼っている人を想定します。受任者へ死亡の連絡が届かなければ、詳細な契約があっても猫を保護できません。医療・介護関係者等に必要な連絡先を共有し、鍵へアクセスする方法と、一時預かりを引き受ける人の了解を確認します。

その後の家財処分は、猫の保護とは別に進めます。相続人への連絡、貸主との調整、保管する物の確認、処分権限の確認が必要です。引受人の氏名を本人が一方的に書くだけで、その人に飼育義務を負わせられるわけではありません。契約締結前に、実行する相手の同意と代替策を確かめます。

費用は、報酬・実費・預託金を分けて見積もる

受任者の報酬、葬儀社や清掃業者等への実費、将来の支払いのために預ける金銭は性質が違います。何が基本報酬に含まれるか、追加対応の単価、上限超過時に誰へ確認するか、立替えができない場合を定めます。本人の口座から死亡後も自由に引き出せる前提で資金計画を作りません。

国の高齢者等終身サポート事業者ガイドラインは、契約内容の説明、意思決定支援、預託金の管理、履行状況の記録・報告等を示しています。預託金の分別管理、残金の帰属、解約時の返還、事業者が継続できなくなった場合も確認します。預託金の管理は関連記事61で詳しく扱います。

契約後に見直す情報と、当事務所の支援範囲

転居、携帯会社の変更、ペットの引受人の事情、希望する葬送方法の変更があれば、契約と別紙一覧を見直します。個別契約先が求める書類や利用規約は、契約書に権限を書いたことだけで変更できません。実行段階で確認が必要な項目も明記し、できると保証しないことが大切です。

相談時には住居形態、頼める人、契約先の一覧、希望する事務と予算を整理してください。当事務所は受任可能な契約書作成、事務と資料の整理を支援し、実行業務を受任する場合も範囲を個別に確認します。相続人との紛争は弁護士、不動産登記は司法書士、税務申告は税理士へ接続します。暗証番号やパスワードを初回相談フォームへ記載する必要はありません。

相談前の確認メモ

以下は、資料を整理するための当事務所の提案です。法令上の全国共通様式ではありません。

確認する区分資料・事実
実行体制死亡連絡、鍵、各窓口、引受人の同意
権限相続・遺言との区分、届出人、処分の根拠
費用・終了報酬、実費、預託金、報告、残金・代替先

公的な根拠・参考資料

下記は制度の確認に用いた公的資料です。本文中の整理表・運用手順・想定例は当事務所の実務上の提案と区別しています。個別案件では、対象サービス・地域・手続時点に適用される法令、通知、提出先の取扱いを確認します。

法務省|高齢者等終身サポート事業者ガイドライン

大阪市|同ガイドラインの案内

e-Gov|民法(第653条等)

e-Gov|戸籍法(第87条等)

20. 死後の部屋の片付けや契約解約を誰に頼むか――終活で決めておきたい権限と費用

61. 死後事務の費用を先に預ける前に――預託金・追加費用・残金の行先を確認する

46. スマホの中の財産と契約を家族に残す――デジタル遺品の一覧と解約の順序

状況を整理して相談する

困っている点、期限、手元の資料、これまでの経過をお知らせください。本記事の相談準備に挙げた資料から必要な範囲を確認し、行政書士が支援できる部分と、他の専門職へつなぐ部分を整理します。

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