はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
58. 子どものいない夫婦の相続――「全部配偶者へ」と考える前に家族関係を調べる
専門記事・実務研究|遺言・相続・終活
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
子どもがいないから、配偶者が当然にすべて相続するとは限りません。親・兄弟姉妹・おいめいとの関係を確認し、住まいと生活資金を守るための遺言準備を整理します。
この記事で確認すること
1. 相続人は夫婦二人だけとは限らない
2. 親族の死亡時期も確認する
3. 住まいと現金の問題を分けて考える
4. 遺言で決められることと残る問題
5. 家族への説明と見直しを予定する
6. 相談時に持参するもの
実務で使う確認表
| 確認対象 | 見落としやすい点 |
|---|---|
| 子の有無 | 前婚の子・認知した子・養子 |
| 親族関係 | 直系尊属の存否・兄弟姉妹の死亡時期 |
| 生活資金 | 自宅の持分・預金・債務を分ける |
| 遺言 | 相手が先に亡くなった場合も検討 |
相続人は夫婦二人だけとは限らない
亡くなった人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外は子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になります。子がいない場合でも親等がいれば配偶者とともに相続し、該当する直系尊属がいなければ兄弟姉妹等が関係します。単に同居していないから相続人でない、という判断はできません。
「私たち夫婦には子どもがいない」という説明でも、前の婚姻の子、認知した子、養子等がいる場合があります。戸籍で確認するのは、疑うためではなく手続の出発点を誤らないためです。日本法を前提とする説明であり、外国籍等が関係する場合は準拠法から別途確認します。
親族の死亡時期も確認する
兄弟姉妹が先に亡くなっているときは、その子であるおい・めいの代襲相続が問題になります。兄弟姉妹の代襲と、相続開始後に相続人が亡くなった数次相続では、調査する人の範囲が違います。名前だけの家系図ではなく、死亡日と続柄を入れて整理します。
架空例では、夫の兄が夫より先に死亡している場合と、夫の死亡後に兄が亡くなった場合とで、確認すべき関係が変わります。古い家族の記憶だけで分割協議書を作らず、戸籍による裏付けと、不明な部分を分けて管理します。
住まいと現金の問題を分けて考える
財産の中心が自宅で、預金が少ない場合には、法定相続分の数字だけでは生活への影響が見えません。自宅の名義・持分・住宅ローン、預貯金、保険、毎月の生活費を一覧にし、残された配偶者が住み続けるために何が必要かを考えます。
自宅を配偶者へ残す方針でも、他の財産の分配や債務、実際の登記手続等が別に関係します。配偶者居住権等を検討する場合も、使える要件と所有権との違いを確認します。節税効果や登記結果を、行政書士だけで保証することはできません。
遺言で決められることと残る問題
配偶者へ財産を残す遺言は、希望を明確にする有力な方法です。兄弟姉妹には遺留分がありませんが、親等の直系尊属が相続人となる場合などは別に検討が必要です。「子がいなければ、誰にも配慮せず全部自由に決められる」とまとめず、相続人の構成に応じて確認します。
夫婦それぞれの財産と意思を整理し、それぞれの遺言として準備します。相手が先に亡くなった場合の予備的な指定、遺言執行者、後で取得した財産や記載漏れの扱いも検討します。特定の親族への感情だけで決めず、実現可能な文言と手続の流れを確認します。
家族への説明と見直しを予定する
希望を家族に説明するか、いつ誰に伝えるかは本人の意思を尊重して決めます。説明したこと自体で他の人の法的な権利がなくなるわけではありません。理由を付言として残す場合も、財産処分の条項と混同せず、事実に反する非難を避けて表現を整えます。
配偶者・親・兄弟姉妹の死亡、自宅の売却、施設入所などは見直しのきっかけです。原本の所在と連絡先を管理し、遺言を作ったことで以後の財産管理まで任せられたと誤解しないようにします。生前の支援契約は遺言と別に考える必要があります。
相談時に持参するもの
家族関係のメモ、手元の戸籍、自宅の登記事項が分かる資料、預貯金・負債の概略、既存の遺言があればその資料を用意します。すべてそろっていなくても、「まだ確認していない親族」「残したい財産」「住み続けたい人」が分かると論点を整理できます。
当事務所では、相続関係の調査や遺言作成の準備を支援します。紛争の交渉・裁判は弁護士、不動産登記は司法書士、相続税の具体的な試算・申告は税理士の担当領域として、必要な確認先を整理します。
根拠・参考資料
制度の説明と実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。架空例は説明のためのもので、当事務所の受任実績ではありません。実際の対応は最新の法令・通知・自治体や提出先の運用と個別事情を確認して判断します。
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