はまなす行政書士事務所

行政書士 角屋敦士

建設業の記事一覧へ

81. 契約書なしで工事を始めていませんか――見積・注文・変更合意を着工前からつなぐ

専門記事・実務研究 81|建設業
作成・公的資料確認日:2026年9月29日

見積書は送った。現場監督から「お願いします」と言われた。しかし工事範囲、支払日、追加工事の扱いが確認できない。この状態で着工すると、施工が進むほど事実の整理が難しくなります。建設工事の契約を、見積・注文・請書・約款・変更合意の一連の資料として整える方法を説明します。

少額工事でも、口頭でよいと決めない

建設業法第19条は、工事内容、請負代金、着手・完成時期、支払、変更等の事項を記載した書面を相互に交付することなどを求めています。建設業許可が不要な軽微な工事であることと、書面契約が不要であることは別です。着工前に契約内容を確定させる流れを作ります。

口頭でも民事上の契約成立が問題となり得ることと、建設業法上必要な書面を整えていることは区別します。「契約書がないから一切の権利義務がない」とも、「口頭で合意したから書面は要らない」ともいえません。すでに争いがある場合は、契約成立や請求権の判断を弁護士へ相談します。

見積書・注文書・請書で使う図面の版をそろえる

注文書と請書の組合せでも、必要事項や約款の扱いなど所定の条件を満たす必要があります。見積書だけを一方的に送った状態と、当事者双方が契約内容を確認した状態は違います。金額の一致だけでなく、工事範囲と除外事項、図面・仕様書、工期、検査、引渡し、支払方法を確認します。

見積の図面が第2版なのに、注文書は第3版を前提にしていないか。支給材料の範囲が現場の理解と一致しているか。資料名・日付・版番号を契約書類へ対応付け、複数文書が食い違うときの確認方法を定めます。現場担当者が連絡窓口であることと、金額や工期を変更する権限を持つことも分けます。

現行約款で、価格・工期が変わる場面を読む

国土交通省が公表する標準請負契約約款は、公共工事、民間工事、下請契約など取引に応じたものがあります。令和7年12月12日施行の改正を含む現行資料を確認し、古いひな型をそのまま使わないようにします。標準約款を使っているだけで、個別の不整合がすべて解消するわけではありません。

資材価格、労務費、供給遅延、設計変更、中止や延期が起きた場合、どの事実をいつ通知し、何を根拠に代金・工期を協議するのかを読みます。「一切変更しない」「追加分は完成後に相談」といった記載を、実態を検討せず受け入れないことが重要です。工期に影響する既知の情報も、契約前から確認します。

想定例:壁を開けたら追加補修が必要になった

例えば、改修工事で当初想定していない補修が必要と分かった場合です。写真、位置、数量、当初範囲との違い、追加費用、工期への影響を整理し、発注権限のある相手へ提示します。「ついでにやっておいて」という現場の一言だけで、追加代金の合意まで済んだとは扱いません。

原則として変更工事に着手する前に、変更内容を双方で確認し、書面等を整えます。安全確保のため緊急措置が必要なときは、必要な措置と、その後に協議すべき恒久工事を区別し、指示者・日時・作業・費用の根拠を残します。緊急だったことを理由に、事後の金額を一方的に確定できるわけではありません。

電子契約と、メッセージの保存を同一視しない

建設業法上、相手方の承諾等の要件を満たす電磁的方法による契約が認められています。ただし、短いメッセージを保存しているだけで、必要事項と法定の方法をすべて満たすとは限りません。契約の成立、本人確認、改ざん防止、閲覧・保存等を含め、採用する方法を確認します。

メールやチャットは、見積の前提、変更指示、送受信の経過を示す補助資料としても重要です。契約書の完成後に全て削除せず、案件番号で契約・変更・施工・請求・入金へつなぎます。取引先のシステムから後で取得できなくなる場合に備え、保存可能な形式と保管責任者を決めます。

着工済みなら、過去の契約日を作らず整理する

書面が未整備のまま着工していた場合は、当時の見積・注文・指示・施工記録を保全し、何について合意があり、何が未確定かを整理します。後日作成した書面を着工前に締結したように遡らせません。すでに金額や範囲で対立している場合は、確認書を押印させることを先行せず、弁護士へ相談します。

初回には、見積書、図面の版、注文・請書、約款、変更指示と支払条件をご準備ください。当事務所は、紛争のない段階での契約書作成や資料の整合、建設業の行政手続を支援します。工事の技術的安全性の判定、紛争交渉、訴訟代理は行いません。

相談前の確認メモ

以下は、資料を整理するための当事務所の提案です。法令上の全国共通様式ではありません。

確認する区分資料・事実
着工前範囲・金額・工期、必要事項、双方の合意
変更時当初との差、権限ある相手、代金と工期
保存契約の版、変更合意、施工・請求・入金

公的な根拠・参考資料

下記は制度の確認に用いた公的資料です。本文中の整理表・運用手順・想定例は当事務所の実務上の提案と区別しています。個別案件では、対象サービス・地域・手続時点に適用される法令、通知、提出先の取扱いを確認します。

国土交通省|建設工事標準請負契約約款(現行版)

関東地方整備局|建設工事の適正な施工を確保するための建設業法(令和8年2月版・取引適正化)

e-Gov|建設業法(第19条・第19条の2・第20条の2等)

30. 「追加分は後で精算」で進めない――追加工事の内容・金額・工期を記録する

65. 「工事一式」の請求書だけで困らないために――注文・施工・請求・入金をつなぐ保存方法

84. 業務委託契約の更新・解約で揉めないために――期間・自動更新・中途解約を最初に読む

状況を整理して相談する

困っている点、期限、手元の資料、これまでの経過をお知らせください。本記事の相談準備に挙げた資料から必要な範囲を確認し、行政書士が支援できる部分と、他の専門職へつなぐ部分を整理します。

この分野の相談ページへ →

建設業の記事一覧へ戻る
HOMEの専門記事・実務研究へ

Is this your new site? Log in to activate admin features and dismiss this message
Log In