はまなす行政書士事務所

行政書士 角屋敦士

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50. 遺産分割前に預金を使いたいとき――払戻し制度と、立替金の記録を分ける

専門記事・実務研究|遺言・相続・終活
作成・参考資料確認日:2026年9月29日

葬儀費用や当面の生活費が必要でも、故人の預金を自由に引き出してよいとは限りません。分割前の払戻し制度の限度と、後の精算で説明できる記録の残し方を整理します。

急ぐ支払と、誰が負担するかを分ける

支払期限が迫っていること、預金から払戻しを受けられること、その費用を最終的に誰が負担するかは別の問題です。請求書の名義、費用の内容、期限、当面の資金、家族の合意状況を分けて整理してください。

故人のキャッシュカードと暗証番号が分かるからといって、正規の相続手続や権限の確認を省略してよいわけではありません。借金が分からず相続放棄を検討する余地がある場合は、預金を使う前に弁護士等へ相談することが重要です。

家庭裁判所の判断を経ない払戻しには限度がある

全国銀行協会の案内によると、口座ごと(定期預金は明細ごと)の相続開始時残高に、3分の1と払戻しを求める相続人の法定相続分を掛けた額が計算の基礎になります。同一金融機関全体では、一人の相続人について150万円が上限です。支店ごとに150万円という意味ではありません。

架空の計算例として、一つの銀行の一口座に900万円、請求する相続人の法定相続分が2分の1なら、900万円×3分の1×2分の1=150万円です。残高が300万円なら計算額は50万円で、上限の150万円をそのまま請求できるわけではありません。

金融機関へ確認してから日程を組む

実際の利用には所定の書類と確認が必要です。遺言がある場合など制度を利用できないこともあるため、口座のある金融機関へ、対象になるか、必要書類、原本還付の取扱い、確認に要する時間を問い合わせます。当日中に支払われる前提で支払日を約束しないでください。

相続関係を証明する資料、請求者の本人確認・印鑑証明等について、金融機関の案内を受けて準備します。既に法定相続情報一覧図の写しがある場合も、それだけで必要書類が全部足りると考えず、追加書類を確認します。

払戻しと立替えを、同じ帳簿に混ぜない

実務上は、故人の預金から受け取った金額と、自分の資金で立て替えた金額を区分して記録することを提案します。日付、金額、支払先、目的、資金の出所、領収書番号、家族への説明状況を残すと、後から照合しやすくなります。

制度による払戻額は、後の遺産分割で、受け取った相続人が取得したものとして調整されます。払戻しを受けたことだけで、支出の全額を他の相続人に負担させられると決まるわけではありません。費用負担に意見の違いがあれば、弁護士へ相談してください。

上限を超える必要がある場合は、別の検討が必要

家庭裁判所の判断による仮払いの制度もありますが、分割の調停・審判、資金の必要性、他の相続人への影響などの条件が関係します。銀行窓口の制度と同じ手続ではありません。より多い額が必要だから自動的に利用できると考えないようにします。

裁判手続の検討が必要な場合は、弁護士等へ、支払の内容・期限・手元資金・相続財産・話合いの状況を伝えてください。請求書や見積書、残高資料、家族との連絡記録があると、必要性を具体的に説明しやすくなります。

当事務所への相談では、依頼したい範囲を整理する

当事務所は、相続関係・財産・支出資料の整理や、金融機関の案内に沿った手続支援を受任可能な範囲で行います。裁判所への申立代理・提出書類の作成や、相続人間の交渉は受任しません。紛争、登記、税務は、それぞれ適切な専門家へ相談する事項です。

初回には、金融機関名、必要な金額と支払期限、遺言の有無、既に引き出した金額、立替えの状況をお知らせください。暗証番号は不要です。急ぐ支払の見通しと、後から説明できる記録の両方を整えることが、手続の混乱を減らします。

根拠・参考資料

全国銀行協会「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」

法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について」

制度の説明と実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。架空例は説明のためのもので、当事務所の受任実績ではありません。実際の対応は最新の法令・通知・自治体や提出先の運用と個別事情を確認して判断します。

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