はまなす行政書士事務所
07. 遺言を作る前に整理する家族関係――再婚・前婚の子・連絡の取れない親族がいる場合
専門記事・実務研究 | 参考資料確認日:2026年9月28日
一緒に暮らす家族と、法律上の相続関係は同じとは限りません。戸籍で確認する事実と本人の希望を分け、遺言の準備で見落としやすい論点を整理します。
この記事の内容
1. 生活上の家族関係と、法律上の関係を分ける
2. 再婚・養子縁組・死亡の順序を確かめる
3. 疎遠であることを、権利がないことに置き換えない
4. 本人の希望を確認する面談の組み立て
5. 実務上の整理表を作る
6. 付言と財産処分の条項を混同しない
生活上の家族関係と、法律上の関係を分ける
日頃の交流が深い人に財産を残したい、疎遠な人には手続の負担をかけたくない。遺言を考える理由はさまざまです。しかし、感情や生活の実態だけで相続人が決まるわけではありません。
相談では、まず「法律上の関係」と「本人が大切にしたい関係」を別々に整理します。戸籍上の続柄を調べる作業と、本人の希望を聞く作業は、どちらか一方で代用できません。
再婚・養子縁組・死亡の順序を確かめる
再婚した場合、前婚の子との関係は、現在一緒に暮らしていないという理由だけでなくなるものではありません。一方、配偶者の子との関係は、養子縁組の有無などの確認が必要です。呼び方だけで親子関係を判断しないようにします。[1]
また、親族が先に亡くなっている場合には、その人の子が関係する場合があります。相続関係は死亡の順序等で変わるため、家族図には「現在の同居人」だけでなく、確認すべき続柄と死亡の有無を記入します。具体的な相続人の範囲は、戸籍資料に基づいて確認します。
疎遠であることを、権利がないことに置き換えない
連絡を取っていない、長年援助をしていない、介護に関わっていないといった事情は、本人の遺言の希望を考えるうえで重要です。ただし、その事情だけで相続人から外れたと判断することはできません。
法定相続分と異なる配分を希望する場合には、遺留分等の問題も検討します。日本公証人連合会も、遺言があっても遺留分に関する紛争が残る場合を説明しています。[2] 意見の対立や請求の可能性が具体化している場合は、作成支援だけで解決しようとせず弁護士に相談します。
本人の希望を確認する面談の組み立て
想定例として、同居家族が「自宅は私に残すと本人が言っています」と相談した場合を考えます。家族の説明は準備の手がかりになりますが、それだけを遺言者本人の確定した意思として扱うことはできません。
本人に、希望する配分、その理由、他の家族への考え方を無理のない方法で確認します。家族の同席が本人の安心につながる場面と、本人だけで意思を確認する必要がある場面を分けます。支援が必要なことと、本人に判断する力がないことを短絡させない姿勢も大切です。
実務上の整理表を作る
整理表には、続柄、戸籍で確認済みか、連絡先の把握状況、財産を残す希望、追加確認事項の五つを設けます。初回の相談では実名の詳細より、関係の全体像が分かることを優先して構いません。
財産を残す人が本人より先に亡くなった場合、財産を売却した場合、新たな家族関係が生じた場合も、見直しの契機になります。遺言作成時だけの家族図を固定せず、生活の変化に合わせて点検できるようにしておきます。
付言と財産処分の条項を混同しない
感謝や配分の理由を文章として残すことには意味があります。ただし、家族への思いを伝える文章と、財産を誰にどのように承継させるかを定める内容は、役割が異なります。説明の文章があるだけで、法的な問題が解消するとは限りません。
当事務所では、家族関係の確認に必要な資料と、ご本人の希望を整理するところからご相談いただけます。関係者間の交渉や紛争の解決は扱う専門職へつなぎ、ご本人の意思を文書に反映するための準備を進めます。
参考資料
[2] 日本公証人連合会「遺言」
本記事は一般的な解説です。実際の対応には、最新法令・通知・自治体運用・個別事情の確認が必要です。想定例は説明のためのもので、当事務所の受任実績を示すものではありません。
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