はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
85. 外国人を採用する前に在留カードだけ見ていませんか――在留資格と実際の業務内容を照合する
専門記事・実務研究 85|法人・契約・融資・入管
作成・公的資料確認日:2026年9月29日
在留カードの有効期限が残っているから採用できる、という判断は十分ではありません。滞在が認められていることと、その会社で予定する仕事ができることは別です。採用前に、カード・指定書等と実際の担当業務を照合し、必要な許可や確認が済んでから就労へ進む手順を整理します。
この記事で確認すること
カードの表面・裏面と、必要な指定書を確認する
本人とカードの同一性、在留資格、在留期間等、就労制限の有無を確認し、裏面の資格外活動許可欄等も見ます。画像の一部や採用紹介会社の説明だけで判断せず、本人から必要な資料を確認します。特定活動など、旅券に添付された指定書の内容が就労範囲の判断に重要な場合もあります。
在留カード等読取アプリケーションや失効情報照会は、偽変造や失効の確認を補う方法です。番号の照会結果だけでカードそのものの真正性や、予定業務への適合性がすべて証明されるわけではありません。疑義がある場合は、本人に確認し、地方出入国在留管理局等の案内に沿って対応します。
在留資格ごとの就労範囲を、肩書だけで判断しない
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった身分・地位に基づく在留資格には、就労活動の制限がありません。ただし、職業そのものに必要な免許や労働関係法令まで免除されるわけではありません。
技術・人文知識・国際業務など活動に基づく資格では、実際の職務が資格の活動範囲に合うかを確認します。「外国語が話せるので国際業務」「採用名目を通訳にしたので店舗業務全般が可能」という整理はできません。本人の学歴・職歴等と、業務の専門性・必要性、報酬・雇用条件を合わせて検討します。
想定例:通訳採用だが、実際は接客と清掃が中心
例えば、求人票には通訳と記載されている一方、現場では受付、レジ、清掃を中心に担当させる予定だった場合です。業務名称を変更するだけでは、在留資格との不一致を解消できません。一日の仕事、担当割合、使用言語、顧客対応の内容、他の職員との分担を確認します。
採用担当と現場責任者で職務内容の認識を合わせ、兼務や研修期間の業務も含めて説明できるようにします。付随業務の許容範囲は個別の実態で確認する必要があり、本記事の例だけで就労可否を断定するものではありません。必要な変更許可等があるなら、許可前にその仕事を始めさせない予定を組みます。
留学・家族滞在は、許可の有無と時間を確認する
留学や家族滞在は、それだけで就労を認める資格ではありません。資格外活動許可がある場合も、包括許可か個別許可か、活動内容・時間等の条件を確認します。一般的な包括許可の週28時間は、複数の勤務先を合算して考えます。自社のシフトだけが28時間以内なら足りるとは限りません。
留学生の長期休業期間中の取扱い等は、その条件に該当するかを学校の定めも含めて確認します。退学・卒業等により本来の活動が変わった場合や、対象業務に特別な制限がある場合も、古いカードの写しだけで勤務を継続しません。本人へ兼業状況を確認する方法と、変更を報告する窓口を決めます。
転職・申請中は「手続済み」の意味を確かめる
同じ在留資格名で転職する場合も、新しい仕事内容が範囲に合うかを確認します。就労資格証明書は、本人が行える就労活動を具体的に確認するための制度で、新たな就労許可を与えるものではありません。適法に就労できる活動であることが明らかな場合に、証明書を持っていないという理由だけで不利益な取扱いをしてはならない点にも留意します。
在留期間更新や資格変更の申請中であることは、新しい仕事が許可されたことと同じではありません。期限後の特例期間が適用されるか、現在できる活動は何か、オンライン申請で何を確認するかを個別に整理します。申請受付と許可を混同せず、本人と連絡を取りながら結果と新しいカード等を確認します。
採用前の照合表を、配属変更にも使う
当事務所が提案する順序は、①予定業務の具体化、②在留資格・許可条件等の確認、③学歴・経歴・雇用条件との照合、④必要な申請等、⑤就労開始前の最終確認、⑥期限・配属変更・届出の管理です。外国人雇用状況の届出と、本人の所属機関等に関する入管への届出は、対象者・提出先が異なるため混同しません。
初回相談は在留資格名、期限、予定する業務、勤務時間、学歴・経歴の概要で構いません。在留カード番号や画像を公開フォームへ入力する必要はありません。当事務所は在留手続と申請書類・職務説明の整理を、対応可能な範囲で支援します。雇用保険・労務手続は社会保険労務士、雇用上の紛争は弁護士へ接続します。許可を保証する表現や、業務実態と異なる説明書の作成は行いません。
相談前の確認メモ
以下は、資料を整理するための当事務所の提案です。法令上の全国共通様式ではありません。
| 確認する区分 | 資料・事実 |
|---|---|
| 本人・資格 | カード両面、指定書、許可条件、有効性 |
| 職務 | 実際の作業、割合、専門性、学歴・経歴 |
| 採用後 | 許可結果、期限、兼業、配属・届出の変化 |
公的な根拠・参考資料
下記は制度の確認に用いた公的資料です。本文中の整理表・運用手順・想定例は当事務所の実務上の提案と区別しています。個別案件では、対象サービス・地域・手続時点に適用される法令、通知、提出先の取扱いを確認します。
出入国在留管理庁|出入国審査・在留審査Q&A(雇用時の確認)
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状況を整理して相談する
困っている点、期限、手元の資料、これまでの経過をお知らせください。本記事の相談準備に挙げた資料から必要な範囲を確認し、行政書士が支援できる部分と、他の専門職へつなぐ部分を整理します。