HOME / 専門記事・実務研究 / 外国人雇用・入管の記事
専門記事・実務研究 87|外国人雇用・入管
外国人の中途採用は「同じ在留資格なら大丈夫」か――就労資格証明書と転職時の判断を整理する
はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士
制度確認日:2026年9月30日
前職も営業職で、在留カードには「技術・人文知識・国際業務」。それでも、新しい会社で担当する仕事の適合性は別に確認する必要があります。本稿は転職時の就労判断と、就労資格証明書を利用する意味・限界を検討します。
このページで確認すること
前職の許可が新しい職務をそのまま証明するわけではない
同じ「営業」でも、専門知識を使う海外取引の企画と、定型的な店頭販売では仕事の内容が異なります。在留カードの資格名は確認の入口ですが、新しい契約、職務、本人の学歴・経歴との関係まで表示しているわけではありません。転職先は自社で行わせる活動について判断資料をそろえる必要があります。[1]
当事務所では「資格名が同じか」だけでなく、「契約相手」「実際の職務」「本人の要件」「残りの在留期間」の四点を分けて確認します。カードの期限が長く残る人ほど確認を先送りしやすいものの、期限の長さと業務の適合性は別の軸です。
証明と許可の法的な役割を分ける
就労資格証明書は、その人が行うことのできる就労活動を具体的に確認しやすくする制度です。新しい在留資格や、従来認められなかった活動を与える許可ではありません。現在の資格で行えない活動を、証明書の申請だけで開始できるようにすることはできません。[2]
一方、証明書がないことだけで就労できないともいえません。適法に行える活動であることが明らかな場合に、証明書を提示しないという理由だけで不利益な取扱いをすることは認められていません。会社は「全員に取得させる」という機械的な条件ではなく、どの事実の確認に必要なのかを本人へ説明することが重要です。[2]
どのようなときに取得を検討するか
判断材料となるのは、前職からの職務の変化、会社の事業と業務量、学歴との関係、兼務の内容などです。例えば専門学校の学修内容と新しい業務のつながりが分かりにくい場合、配属先の実際の作業が求人票と異なる場合は、説明資料を整えて確認する意味があります。申請に必要な資料は、証明を求める活動や事情に応じて確認します。[3]
証明書取得を検討する段階でも、職務内容が未定なら審査の対象となる事実を十分に示せません。内定通知を出した日、就労予定日、在留期限を一覧にし、必要な確認のための時間を採用計画へ織り込みます。「申請したので働かせてよい」という判断にはしません。
想定例:転職先では店舗応援が恒常化する予定
前職で翻訳・海外顧客対応を行っていた人を、新会社も海外営業として採用する想定です。新会社は海外顧客が少なく、実際は国内店舗の応援勤務が大半になる見込みでした。この場合、前職の職務説明書を会社名だけ差し替えて使うことが最も避けるべき処理です。
新会社の仕事を日・週単位で確認し、本人が担当する専門業務の内容と量を示します。仕事内容を調整する場合は現場でも実行できる配置にします。なお不明点が残るなら、公表資料・窓口相談・就労資格証明書等による確認を検討し、在留資格変更等が必要であれば許可を得る順序を組みます。証明書を取ること自体を目的にして、実態の整理を省略してはいけません。
技人国の転職と、所属機関が指定される資格を混同しない
本稿の中心である技人国と、高度専門職1号等では、転職時に必要な手続が異なります。高度専門職1号は所属機関が指定されるため、引き続き同資格の活動を行う場合でも、転職に伴う在留資格変更許可申請が必要になります。資格名がカード上で似ていることを理由に、同じ処理を当てはめません。[4]
特定技能についても、技人国の転職と同じ前提で就労開始を判断しないことが必要です。在留カードに加えて指定書や契約内容を確認し、適用される資格ごとの変更手続を整理します。採用担当者が会社共通の「外国人転職マニュアル」一枚で全員を処理する設計には限界があります。
所属機関の届出と、更新期限は別に管理する
技人国等の対象となる中長期在留者は、契約終了や新たな契約締結等について14日以内の届出が必要です。届出をしたことは新しい業務の許可を得たことと同じではなく、就労資格証明書を申請しても届出を済ませたことにはなりません。[5]
さらに、証明書の申請を在留期間更新の代わりにしてはいけません。残期間が短い場合は、更新手続との関係を先に確認します。当事務所が提案する記録は、退職日、新契約締結日、就労開始予定日、届出日、証明書の申請・結果、更新期限を別々の欄に置く方法です。資料を同じフォルダへ入れるだけでは、どの手続が完了したか判別できません。
採用後に残すべきなのは、確認した前提である
採用時に確認した職務、勤務場所、契約、報酬と、判断に使った資料を記録します。証明書が交付された場合も、その後に業務が変われば当時の前提と同じかを再確認します。証明書の写しを保管していることだけで、将来の更新や異なる配属の適合性まで保証されるわけではありません。
継続支援では、採用予定の早期相談、職務の比較、必要資料の整理、入管手続と届出の進行確認を行えます。雇用条件の不利益変更、内定取消し、退職交渉等は別の法的問題を伴うため、社会保険労務士・弁護士と分担します。本人の就労機会を不必要に狭めず、会社が説明できる判断過程を残すことが支援の目的です。
確認資料の整理
次の表は、制度の要件と事実を照合するための整理例です。すべての申請に一律に提出する法定書類一覧ではありません。
| 混同しやすい手続 | 確認する目的 |
|---|---|
| 就労資格証明書 | 現在行える就労活動の確認。新しい活動の許可ではない。 |
| 在留資格変更許可申請 | 活動・資格等の変更に必要な許可の検討。 |
| 所属機関等の届出 | 契約等に生じた事実の報告。就労可否を許可する手続ではない。 |
| 在留期間更新許可申請 | 期間満了後も在留を続けるための手続。証明書申請で代替しない。 |
公的根拠・参照資料
制度・行政の公表する取扱いの根拠は以下の資料です。本稿の想定例、照合表、社内の管理方法は当事務所の実務上の提案であり、許可の保証や一律の法定様式を示すものではありません。
[1] 出入国在留管理庁|在留資格「技術・人文知識・国際業務」
活動範囲、申請区分別・カテゴリー別の提出資料。2026年の追加資料案内を含む。
[2] 出入国在留管理庁|就労資格証明書
制度の目的、証明書不提示のみを理由とする不利益取扱いの禁止。
[3] 出入国在留管理庁|就労資格証明書交付申請
申請対象・提出資料・手続。
[4] 出入国在留管理庁|所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A
本人・機関の届出の区別、高度専門職1号の転職等。
[5] 出入国在留管理庁|所属(契約)機関に関する届出
外国人本人の届出事由と14日以内の期限。
個別の申請では、資格・申請区分・所管窓口ごとの最新案内を確認します。本文の制度確認日以後の改訂は別途確認が必要です。
関連記事
86. 「技人国」で採用できる仕事をどう説明するか――職務・学歴・事業の実態を結ぶ立証設計
88. 在留期限を過ぎても「申請中だから大丈夫」か――特例期間・オンライン申請・就労継続を分ける
89. 外国人の入社・退職届は誰が出すのか――本人・会社・ハローワークの手続を切り分ける
外国人雇用・入管手続のご相談
現在の在留資格、前職と新職の仕事内容、採用予定日、在留期限をお知らせください。必要な確認・申請・届出を分けて整理します。
行政書士が対応する業務と他士業へつなぐ事項を整理し、費用と受任範囲を確認してから進めます。