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専門記事・実務研究 92|外国人雇用・入管
特定技能の「日本人と同等以上の報酬」をどう説明するか――比較対象・賃金項目・控除の検証
はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士
制度確認日:2026年9月30日
最低賃金を上回っているので、特定技能の報酬要件も満たしている。その説明だけでは十分ではありません。比較する仕事・技能・責任の程度、賃金の内訳、所定労働時間が異なれば、月の支給総額だけを並べても比較になりません。本稿は、同等以上の報酬という要件を、説明可能な賃金資料へ落とし込む方法を検討します。
このページで確認すること
最低賃金の遵守と、同等以上の報酬を区別する
特定技能の雇用契約では、日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることが求められます。最低賃金を上回るかという確認と、日本人との比較により説明する確認は、目的も基準も異なります。一方を満たせば他方の検討が不要になるわけではありません。[1]
比較は国籍だけで二群に分けて平均額を出す作業ではありません。同程度の技能等を有する人が、同種の業務に従事する場合という観点で、職務、責任、経験、技能、勤務条件を確認します。会社の賃金制度がどの要素を評価しているかを明らかにすることが、外国人本人への説明にもつながります。[2]
比較対象者は、安い人から選ばない
同じ部署の日本人であっても、補助的な仕事をする入職直後の人と、工程を任される経験者では比較の前提が異なります。給与額が近い人を先に選び、後から「同等」と書く方法では根拠が逆転します。職務と能力の位置付けを確認した後で、比較対象者を選びます。
会社内に適当な日本人の比較対象者がいない場合も、要件そのものがなくなるわけではありません。賃金規程や同種業務の報酬等、公式Q&Aが示す考え方に沿って説明資料を検討します。[2] その際、地域の求人票を一件だけ持ち出して結論を出さず、条件の違いと、会社の賃金決定方法を併せて示します。
総支給額を比べる前に、項目と時間の基準をそろえる
想定例として、同程度の職務を担当する日本人の基本給が月20万円、外国人の基本給が18万円で、外国人には固定残業代3万円が付いている場合を考えます。「21万円なので20万円以上」と総額だけで結論を出すと、残業の対価を含まない給与と含む給与を比較している可能性があります。これは許否や個々の賃金の適法性を判定する計算例ではなく、比較条件のずれを示す例です。
基本給、諸手当、時間外等の対価、実費弁償的な支給を分け、それぞれの性質を確認します。所定労働時間、月給・時給の違い、賞与等の支給条件もそろえて読みます。名称が同じ手当でも実態が異なることがあるため、給与明細だけでなく賃金規程と契約条件を照合します。[1][3]
手取りの減少を、別の論点として追う
報酬要件の比較と、税・社会保険料・寮費等の控除を経た手取りの確認は分けて行います。同等以上の報酬を説明できても、本人が理解していない控除や、不適切な費用負担があれば、別の問題が残ります。支援に要する費用を外国人本人へ直接又は間接に負担させないという制度上の条件にも注意します。[1]
寮費の名目で支援費用が混在していないか、費目の根拠と実際の支払先を確認します。控除の労働法上の可否や労使協定等の取扱いは社会保険労務士・弁護士の担当領域も含みます。「本人が署名したから何でも控除できる」と考えず、本人への説明と制度上の適否を別々に確認します。
昇給・配置変更の後に、申請時の説明を放置しない
申請時には同じ仕事だった人が、その後に担当工程を増やした、資格を取得した、班の指導を担当するようになった場合、比較の前提が変わります。日本人の賃金体系だけが改定され、外国人の条件が据え置かれる場合も、当初の説明をそのまま使い続けることはできません。
当事務所の提案は、賃金改定と配置変更の際に、前回の比較表を開いて変更箇所を確認する運用です。すべての人に一律の昇給額を設定するという意味ではなく、差の根拠を説明できる状態を保ちます。分野ごとの追加的な基準や手続がある場合は、共通要件だけで完了とせず所管の案内を確認します。
不整合が見つかったときは、資料だけを直さない
最初に雇用契約、賃金規程、実際の給与明細、勤務実績、比較対象の条件を並べます。計算・分類の誤りなのか、契約と支払の食い違いなのか、比較対象の選定が適切でないのかを分けます。実際の支払に問題があるのに、説明書の金額だけを変更することはしません。
必要な労務上の是正を専門職と検討し、その結果を踏まえて入管への申請・届出・説明の対応を確認します。既に提出済みの資料と異なる事実があれば、発生日と経緯を記録します。外国人本人にも、何を見直したのかを理解できる方法で伝えることが重要です。
継続支援の対象を、賃金決定の代行と混同しない
行政書士の支援として整理できるのは、在留手続で必要となる報酬説明の資料、比較の前提、申請内容と実態の整合です。会社の賃金を一方的に決定したり、給与計算・社会保険手続をすべて受任する趣旨ではありません。労務制度は社会保険労務士、紛争や未払賃金等の法的対応は弁護士へ接続します。
顧問支援では、年度の賃金改定時、配置変更時、更新準備時に同じ比較根拠を参照できるようにします。申請用に作った説明と会社の実際の評価制度が分離しないことが、資料整備の価値です。
確認資料の整理
次の表は、制度の要件と事実を照合するための整理例です。すべての申請に一律に提出する法定書類一覧ではありません。
| 比較の段階 | 確認する根拠 |
|---|---|
| 仕事・能力 | 職務、担当工程、責任、経験、技能。給与額から対象者を逆算しない。 |
| 賃金の条件 | 賃金規程、契約、所定時間、手当・残業・賞与の条件。 |
| 実際の支払 | 給与明細、勤務実績、控除の内訳。契約額だけで終えない。 |
| 変更後の状態 | 昇給・職務変更の記録、比較根拠の改訂日、本人への説明。 |
公的根拠・参照資料
制度・行政の公表する取扱いの根拠は以下の資料です。本稿の想定例、照合表、社内の管理方法は当事務所の実務上の提案であり、許可の保証や一律の法定様式を示すものではありません。
[1] 出入国在留管理庁|特定技能・雇用における注意点
雇用契約、報酬、支援費用の本人負担禁止。
[2] 出入国在留管理庁|特定技能制度Q&A
報酬の比較対象者がいない場合等の判断の考え方。
[3] 出入国在留管理庁|特定技能関係の申請・届出様式
報酬説明・相談記録・面談報告等の参考様式。
個別の申請では、資格・申請区分・所管窓口ごとの最新案内を確認します。本文の制度確認日以後の改訂は別途確認が必要です。
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職務内容、賃金規程、雇用条件、給与明細、比較対象の考え方をご用意ください。入管上の説明と労務上の確認を分けて整理します。
行政書士が対応する業務と他士業へつなぐ事項を整理し、費用と受任範囲を確認してから進めます。