はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
76. 相続登記が義務化されたら行政書士に全部頼める?――戸籍収集・遺産分割と登記を分けて考える
専門記事・実務研究 76|遺言・相続・終活
作成・公的資料確認日:2026年9月29日
戸籍を集めて協議書ができても、不動産の名義は自動で変わりません。相続登記の義務化によって行政書士の業務範囲が広がったわけでもありません。期限を守りながら手続を進めるため、資料調査・合意の書面化・登記を分け、司法書士等への相談を準備段階から組み込みます。
この記事で確認すること
相続を知った日と、不動産取得を知った日を確認する
相続登記の申請義務化は令和6年4月1日に始まりました。相続による所有権の取得を知った日から3年以内に申請するのが基本です。単に戸籍上の死亡日だけを一覧にするのではなく、その不動産を相続で取得したことをいつ知ったかも確認します。
施行前から知っていた未登記の相続も対象となり、原則として令和9年3月31日までの対応が必要です。施行後に取得を知った場合は、その日から3年の期限との関係を確認します。遺産分割が成立したときは、成立日から3年以内にその内容を反映する登記が必要となる追加の義務もあります。期限が先だから協議を放置してよい、という意味ではありません。
依頼先は、手続の名前と成果物で分ける
行政書士は、他法令で制限されるものを除き、受任業務に必要な相続人・財産の調査や、争いのない合意内容を遺産分割協議書等へ整える支援を行います。不動産登記の申請代理、登記申請書の作成、相続人申告登記の申出代理を当事務所が行政書士として受任することはできません。これらは司法書士等へ相談します。
戸籍収集も「登記だけを目的とする案件を行政書士が一式受任する」という説明にはしません。不動産が中心の相続では、当初から司法書士へ相談し、誰がどの資料を取得し、原本を誰へ渡すかを決める方が、取り直しや二重費用を防げます。税額計算・相続税申告は税理士、対立がある場合の代理交渉・紛争解決は弁護士の領域です。
想定例:協議がまとまらず期限が近い
例えば、令和4年に親から相続した土地について、兄弟間で取得者が決まっていない場合を考えます。「協議書が完成するまで登記の相談はできない」と待つと、義務への対応を遅らせます。不動産と相続関係の資料を持ち、司法書士や法務局へ期限内に取り得る手続を相談します。
相続人申告登記は、相続人であること等を申し出て基本的な申請義務を履行できる仕組みです。ただし、持分や取得者を確定して公示する通常の相続登記とは異なり、これだけで売却等の準備がすべて整うわけではありません。後に分割が成立すれば、その内容に基づく登記が必要です。また、一人の申出が当然に他の相続人全員の義務を済ませるわけではありません。
固定資産税の通知だけで対象不動産を確定しない
納税通知書、名寄帳、登記事項証明書、権利証等を照合します。課税上の代表者と登記名義人が違う場合や、私道・共有持分等が手元の通知だけでは見つからない場合があります。住所と登記上の地番・家屋番号も異なるため、「実家一式」とだけ伝えず一筆・一棟ごとに整理します。
祖父名義のままなら、親の相続だけでなく祖父からの相続関係も確認が必要です。誰の死亡により、どの段階の相続が未了なのかを時系列にします。必要戸籍の範囲や協議書の構成は司法書士と調整し、原本に書き込みをせず、取得先と取得日を控えます。
協議書に署名する前に、登記に使える内容かを接続する
不動産の表示、取得者、共有持分、代償金の有無等を整理し、合意が争いなく成立していることを確認します。署名後に「地番が抜けている」「実際には別の相続も必要だった」と判明すると、全員へ再度依頼する負担が生じます。不動産を含む協議書は、完成前から登記担当者と必要事項を照合します。
相続放棄、遺言の効力、使途不明金、寄与分などが問題となる場合は、単なる記載修正では済まないことがあります。行政書士が一方の主張を他方へ受け入れさせる交渉には進まず、弁護士等への相談を優先します。
期限と担当者を一枚にまとめる
進める順序は、①死亡・取得を知った時期と期限の整理、②遺言・相続人・不動産の確認、③登記担当者への早期相談、④協議や必要な制度の選択、⑤合意文書等の準備、⑥登記申請と完了確認です。相続放棄や税務など別の期限がある場合は、それぞれ専門職へ並行してつなぎます。
初回には、死亡時期、不動産の所在地、名義人、相続人の概要、遺言・協議の有無をお知らせください。当事務所は受任可能な資料整理と文書作成を明確にし、登記部分は司法書士等へ接続します。正当な理由なく申請義務に違反した場合には10万円以下の過料の可能性がありますが、不安を煽るために用いず、個別の期限と未了手続を具体的に確認します。
相談前の確認メモ
以下は、資料を整理するための当事務所の提案です。法令上の全国共通様式ではありません。
| 確認する区分 | 資料・事実 |
|---|---|
| 期限 | 取得を知った日、施行前相続、分割成立日 |
| 物件 | 地番・家屋番号、名義、持分、未登記の相続段階 |
| 担当 | 資料・協議書、登記、税務、紛争の役割分担 |
公的な根拠・参考資料
下記は制度の確認に用いた公的資料です。本文中の整理表・運用手順・想定例は当事務所の実務上の提案と区別しています。個別案件では、対象サービス・地域・手続時点に適用される法令、通知、提出先の取扱いを確認します。
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状況を整理して相談する
困っている点、期限、手元の資料、これまでの経過をお知らせください。本記事の相談準備に挙げた資料から必要な範囲を確認し、行政書士が支援できる部分と、他の専門職へつなぐ部分を整理します。