はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
83. NPO法人の理事会と総会、どちらで決める?――定款と法定事項から決議機関を確認する
専門記事・実務研究 83|法人・契約・融資・入管
作成・公的資料確認日:2026年9月29日
理事長が了承した、理事会で報告した、総会議事録には載っている。それぞれの事実があっても、必要な機関で適法に決めたことになるとは限りません。NPO法人の意思決定を、法定事項・定款の委任・招集と議決・実行後の手続に分けて整理します。
この記事で確認すること
NPO法の原則は、定款による委任と組み合わせて読む
特定非営利活動促進法第14条の5は、法人の業務について、定款で理事その他の役員に委任したものを除き、社員総会の決議による原則を定めています。「日常運営だから必ず理事長」「金額が大きいから必ず総会」と、慣習だけで判断しません。
ここでいう社員は、通常の意味の従業員ではなく、社員総会で議決権を持つ構成員です。多くの定款では正会員等を社員と定めていますが、自法人の条文で確認します。NPO法人の理事会は、株式会社の取締役会の規定をそのまま当てはめるものではなく、設置・権限・議決方法を定款から読みます。
法定の総会事項を、理事会へ移せるとは考えない
内閣府NPOホームページは、定款変更、解散、合併について総会での決議が必要であり、理事会等へ委任できないと説明しています。これらは単なる内部の事務分担ではありません。必要な賛成数等も通常議案と同じとは限らず、法律と定款を合わせて確認します。
定款変更では、総会決議に加えて、所轄庁の認証が必要な事項と届出で足りる事項を区別します。認証が必要な変更を、決議した日からすべて有効になったものとして運用しないようにします。登記事項に影響する場合は、認証・届出と登記も別に管理します。
事業計画・予算・役員選任・借入は定款の該当箇所へ
法定の専属事項以外は、自法人の定款がどの機関へ権限を配分しているかを確認します。事業計画や予算を総会事項とする例も、理事会事項とする例もあり、他法人の議事録をコピーして決めることはできません。役員選任、理事長の選定、報酬、借入、重要な財産処分等も、それぞれの条文を読みます。
「総会が最高機関だから何でも総会で決めればよい」とするのも不十分です。招集通知の議題、定足数、議決権、特別な利害関係のある社員の取扱い、理事会との手順を確認する必要があります。規程や過去の決議は定款に反する権限を新たに作るものではありません。
想定例:新事業所の開設と借入を決める
例えば、既存事業を拡張して新事業所を開く場合です。定款上の事業範囲に含まれるか、事業計画・予算の変更が必要か、借入の決定機関はどこか、事務所の変更に当たるかを分けます。「新店舗開設の件」と一行だけ決議するのではなく、必要な決定と手続を棚卸しします。
事業目的や事業の種類を変更する必要があれば、定款変更の総会決議・認証等を検討します。定款内の既存事業の実施であれば、その範囲内の決議・執行として扱えるかを確認します。さらに福祉事業の指定申請、賃貸借、融資契約など外部手続は、それぞれの前提条件と日程を組みます。
会議を開くことと、適法な決議を得ることは別
現行の社員名簿、定款、招集通知、委任状・書面表決、出席状況を照合し、定足数と賛成数を確認します。監事の役割や、議長、議事録署名人等も定款の定めに従います。議題にない事項をその場で追加する場合は、法令・定款上の取扱いを先に確認します。
社員総会のみなし決議は、法定の条件の下で社員全員が書面又は電磁的記録で同意する仕組みです。理事全員のメール返信だけで総会決議の代わりにしたり、返信のない社員を同意したものとして数えたりはできません。みなし決議と、会議における書面表決・委任状を混同しないでください。
議事録は、決めた内容と実行する権限を残す
当事務所が提案する議案管理表では、案件ごとに法令・定款の根拠、決議機関、開催・同意方式、必要資料、決議内容、実行担当、外部手続を並べます。金額、対象、条件、実行時期が曖昧なら、何が承認されたか分かる形に議案を整えます。
過去の決議に疑問がある場合は、当時の定款・名簿・通知・議事録を保全し、現実に行われた決定を確認します。議事録の文言だけを直して、開催や同意の事実を作りません。当事務所は定款・議事録等の書類整備と所轄庁手続を支援します。決議の効力をめぐる争いは弁護士、法人登記は司法書士へ接続します。初回には最新の有効な定款と、今回決めたい事項をご用意ください。
相談前の確認メモ
以下は、資料を整理するための当事務所の提案です。法令上の全国共通様式ではありません。
| 確認する区分 | 資料・事実 |
|---|---|
| 権限 | 法律、現行定款、委任事項 |
| 議決 | 社員・役員、通知、定足数、賛成数、同意方式 |
| 実行 | 決議条件、認証・届出、登記、担当者 |
公的な根拠・参考資料
下記は制度の確認に用いた公的資料です。本文中の整理表・運用手順・想定例は当事務所の実務上の提案と区別しています。個別案件では、対象サービス・地域・手続時点に適用される法令、通知、提出先の取扱いを確認します。
内閣府NPOホームページ|設立の認証・手続き等(総会・委任・みなし決議)
e-Gov|特定非営利活動促進法(第14条〜第14条の9・第25条等)
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