はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
36. 法務局に預けた遺言を家族が見つけるには――二つの通知と、保管後の連絡先管理
専門記事・実務研究|遺言・相続・終活
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
遺言書を預けたことで安心して、家族への連絡や住所変更を忘れていませんか。保管した後に必要な準備と、亡くなった後に内容を確認するまでの流れを整理します。
この記事で確認すること
1. 保管していることが伝わる準備まで考える
2. 指定者通知は、本人が希望して準備する通知
3. 関係遺言書保管通知は、別のきっかけで届く
4. 保管後に住所や氏名が変わったら
5. 遺言が見つかった後にも確認事項がある
6. 確認リストとQ&A
保管していることが伝わる準備まで考える
自筆証書遺言書保管制度は、遺言書を法務局で保管する制度です。紛失等への備えになりますが、預けた事実を家族が知らず、手続のきっかけをつかめないことがあります。保管の申請を終えたら、誰に、何を、どの方法で伝えるかを考えます。
遺言の内容を生前に家族全員へ知らせるかは、本人の意思や事情によります。一方、内容を詳しく知らせない場合でも、保管の事実、保管所、保管番号等の手掛かりをどこに残すかは整理できます。保管証や連絡メモは、見つけてもらえる場所と情報管理の両方に配慮して保管します。
指定者通知は、本人が希望して準備する通知
指定者通知は、本人があらかじめ希望し、通知対象者を指定する仕組みです。法務局が遺言者の死亡の事実を確認した場合に、指定された方へ遺言書が保管されている旨を知らせます。通知対象者は3名まで指定できます。相続人に限って選ぶ制度ではありません。
誰を指定するかは、連絡が届きやすいことに加え、その人が何をすればよいか理解できるかも考えます。例えば遠方の親族を指定する場合は、通知を受けた後に連絡してほしい相手を本人の希望として整理します。ただし、通知を受ける人になっただけで、財産を取得する権利や遺言執行の権限が生じるわけではありません。
死亡後すぐに関係者全員へ届く連絡網の代わりと考えず、病院・施設等からの緊急連絡や葬儀の連絡は別に準備します。通知がいつ届くかだけを頼りに、必要な相続手続を待たないようにしてください。
関係遺言書保管通知は、別のきっかけで届く
関係遺言書保管通知は、相続開始後、関係相続人等が遺言書情報証明書の交付を受けたり遺言書を閲覧したりした際に、他の関係相続人等へ保管の事実を知らせる仕組みです。本人が通知対象者を指定する「指定者通知」とは、通知のきっかけも相手の範囲も異なります。
「法務局へ預ければ、死亡した時点で全相続人に内容の全文が自動送付される」という理解は避けてください。通知を受けることと、所定の手続で遺言書の内容を確認することは別です。届いた通知の名称を確認し、必要な添付書類や予約方法を案内に沿って確かめます。
保管後に住所や氏名が変わったら
遺言者本人、受遺者、遺言執行者、通知対象者等の住所・氏名に変更がある場合は、変更届出の対象と手続を確認します。住民票を異動したから保管制度上の情報も必要な範囲ですべて更新される、とは考えないでください。届出がされないと、通知や内容確認の手続に支障が生じる場合があります。
年に一度など、本人が無理なく確認できる時期に、連絡先と財産一覧を見直す方法が考えられます。この頻度は実務上の提案であり、法定の毎年更新義務という意味ではありません。転居、改姓、通知対象者の死亡等があれば、その都度確認します。
住所の届出を直すことと、財産を渡す相手や内容を変えることは別です。遺言の内容を変更したいときは、変更届出だけで済ませず、新しい遺言の作成や従前の遺言との関係を正式な方式に沿って検討します。
遺言が見つかった後にも確認事項がある
保管事実の確認、内容を確認する証明書の取得や閲覧、それを利用した金融機関等の相続手続は、段階を分けて考えます。保管されている遺言書については家庭裁判所の検認が不要となる扱いですが、保管したこと自体が遺言内容の有効性や実現可能性を保証するものではありません。
複数の遺言がある、財産が既に処分されている、受け取る予定の人が亡くなっているなどの場合は、作成日と内容、現在の事情を照合します。家族の記憶で内容を補ったり、確認前に財産の分配を急いだりしないことが大切です。
確認リストとQ&A
□ 指定者通知を希望したか、対象者は誰かを確認したか。
□ 保管所・保管番号等の手掛かりを残したか。
□ 転居や改姓に伴う届出を確認したか。
□ 遺言の内容と死亡直後の連絡体制を分けたか。
Q. 通知を受ける人に、遺言の内容を生前に全部知らせる必要がありますか。
A. 通知の指定と、生前に内容を共有する判断は別です。ただし、通知を受けたらどう動くかが分からない状態を避けるため、本人の希望に応じて必要な説明をしておくとよいでしょう。
当事務所では、遺言作成に向けた資料整理、保管制度の利用準備、家族への引継ぎ事項の文書化を支援します。手続方法は変更されることがあるため、予約・本人出頭等の要否も含め、申請時の法務局案内を確認します。
根拠・参考資料
制度の説明と、実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。例示は架空の検討例です。実際の対応は最新の法令・通知・申請先の運用と個別事情を確認して判断します。
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