はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
55. B型の売上はあるのに工賃が伸びない――生産活動の収入・経費・支払をつなぐ
専門記事・実務研究|障害福祉・児童発達支援
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
就労継続支援B型では、売上の大きさだけでは利用者へ支払える工賃を判断できません。福祉事業と生産活動の区分、経費の根拠、工賃計算の説明を整理し、運営上の課題を見える形にします。
この記事で確認すること
1. 売上と、工賃の原資を取り違えない
2. 経費は「何に使ったか」で整理する
3. 受注ごとの簡単な採算表を持つ
4. 計算基準と支払記録を対応させる
5. 月次管理と決算時の調整を分ける
6. 相談資料は五点に絞る
実務で使う確認表
| 点検対象 | 照合する資料 |
|---|---|
| 収入 | 受注記録・売上・入金 |
| 経費 | 請求書・使途・配分根拠 |
| 工賃 | 規程・計算表・明細・振込 |
| 年度末 | 在庫・未収未払・年間収支 |
売上と、工賃の原資を取り違えない
受注が増えても、材料費や外注費が増えれば工賃の原資が同じように増えるとは限りません。まず、生産活動による収入と必要な経費を対応させます。障害福祉サービスの給付費と生産活動の売上を混ぜて、口座残高だけで工賃を決める方法では、活動の採算も支払の根拠も分かりにくくなります。
指定就労継続支援B型の運営基準では、生産活動の事業収入から必要経費を控除した額に相当する金額を工賃として支払うことが基本です。積立金等の取扱いには別途基準があるため、余った額を自由に法人の利益へ回せるという意味ではありません。法人形態と適用する会計基準も確認します。
経費は「何に使ったか」で整理する
材料、包装、配送、販売手数料、外注等について、どの仕事のために生じた費用かを記録します。事業所全体の費用を一律に生産活動へ付け替えるのではなく、直接対応するものと共通するものを分けます。共通費の配分は、面積・使用量等の合理的な根拠と継続的な取扱いを検討します。
職員人件費等の計上範囲も、給付費で賄う支援との関係や通知・会計基準を確認する必要があります。「工賃を下げたいから経費を増やす」「補助金の対象だから二重に計上する」といった処理はできません。経理担当だけに任せず、作業を知る現場職員が費用の内容を説明できるようにします。
受注ごとの簡単な採算表を持つ
架空の単純化した例では、ある受注の売上10万円に対し、材料・配送等の直接費が6万円なら、差額は4万円です。ただし、この4万円は直ちに分配できる確定工賃ではなく、対象期間のほかの収支や適切な共通費等を確認する前の数字です。売上だけを見た値引き受注は、原資を減らす場合があります。
受注額、見込直接費、実際の費用、納期、利用者と職員の作業負担を記録すれば、どの仕事が無理なく続けられるか検討できます。利用者の訓練・体調・選択も重要であり、採算の低い活動を直ちに排除する判断にはしません。支援上の意義と収支上の課題を分けて会議に上げます。
計算基準と支払記録を対応させる
工賃規程、出席・作業記録、計算表、支払明細、振込記録を一続きに点検します。単価や評価の基準、欠席・作業変更時の扱い、端数処理などを明確にし、利用者が理解しやすい形で説明します。本人に分かりにくい評価項目だけで大きな差を付ける運用は、説明の見直しが必要です。
規程の変更は、理由、適用開始日、説明方法を記録し、既に行った活動へ後から不利益な条件を持ち込まないよう検討します。利用者との契約関係や労働者性の問題がある場合は、名称が工賃であることだけで結論付けず、労働・法律の専門家への確認を行います。
月次管理と決算時の調整を分ける
売上計上と入金、材料購入と使用、在庫の残高がずれると、現金収支だけでは実態を把握できません。月次では未収・未払と在庫の動きを整理し、期末には適用する会計処理に従って整合を確認します。支払済み工賃と年間の生産活動収支が一致しない理由を説明できることが重要です。
工賃向上計画や平均工賃月額の報告、報酬区分の算定は、それぞれ対象期間や計算方法を確認します。独自の採算表の数値を、そのまま行政報告の数値として転記しないようにします。不足や差異が見つかったときは、帳簿を都合よく直す前に原因と是正方法を検討します。
相談資料は五点に絞る
最初は、直近の生産活動収支、経費の内訳、工賃規程、匿名化した計算表、代表的な受注一件の資料をそろえると整理が進みます。金額だけでなく、誰が受注を決め、費用を承認し、計算を点検しているかも確認してください。赤字原因と支払計算の問題を分けて扱います。
当事務所は、運営資料・規程・行政向け書類の整理を支援します。税務相談・税務申告は税理士、労務上の専門判断は対応する専門職と連携します。この記事はB型の一般的な整理であり、A型の賃金・雇用管理へそのまま転用することはできません。
根拠・参考資料
厚生労働省「指定障害福祉サービス等の人員、設備及び運営に関する基準」B型・工賃
厚生労働省「就労支援等の事業に関する会計処理の取扱いについて」
制度の説明と実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。架空例は説明のためのもので、当事務所の受任実績ではありません。実際の対応は最新の法令・通知・自治体や提出先の運用と個別事情を確認して判断します。
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