はまなす行政書士事務所
06. 公正証書遺言と自筆証書遺言、どう選ぶか――費用だけでは決められない準備の論点
専門記事・実務研究 | 参考資料確認日:2026年9月28日
遺言の方式は、書きやすさだけでなく、内容の整理・保管・発見・実行まで考えて選びます。作成前に確認したい事項と、法務局保管制度の位置付けを解説します。
この記事の内容
1. 先に決めるのは書式より、実現したいこと
2. 二つの方式と、保管制度の違い
3. 選ぶ際の四つの視点
4. 「自宅を配偶者に残す」という希望を具体化する
5. 検認と、死亡後の手続も確認する
6. 相談前に用意するメモ
先に決めるのは書式より、実現したいこと
「公正証書にした方がよいですか」と聞かれたとき、方式の比較だけで結論を出すことはできません。誰に何を残したいか、その財産が本人のものか、受け取る人や家族関係に変化があり得るかによって、整理すべき内容が変わるからです。
遺言の準備では、家族関係、財産、配分の希望、作成・保管の方法、死亡後に実行する人という順序で考えると、方式を選ぶ理由が明確になります。エンディングノートに希望を書くことと、法的な方式に従った遺言を作ることも区別します。
二つの方式と、保管制度の違い
自筆証書遺言では、本文・日付・氏名の自書と押印など、法律上の方式への対応が必要です。財産目録には自書を要しない取扱いがありますが、添付の仕方や署名・押印等の要件を別に確認します。手書きであれば内容を問わず有効になるわけではありません。[1]
公正証書遺言は、公証人が本人の意思を確認し、証人の立会いなどの手続を経て作成します。準備段階で専門家の支援を受けても、本人の意思表明を代理人の判断に置き換えることはできません。[2]
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、自筆証書遺言を預ける仕組みです。形式についての外形的な確認はありますが、遺言の有効性を保証する制度ではありません。[3]
選ぶ際の四つの視点
第一に、本人が方式に沿って作成できるか。書字の負担、体調、意思を表すために必要な配慮を整理します。第二に、内容を誰が確認するか。財産の特定、受け取る人の表示、前の遺言との関係などは、保管とは別の問題です。
第三に、死亡後に見つけてもらえるか。保管場所や制度利用の情報を、必要な人が把握できるようにします。第四に、実行できる内容か。不動産の表示が曖昧、処分済みの財産が残っている、受取人が先に亡くなった場合を考えていない、といった点を検討します。
「自宅を配偶者に残す」という希望を具体化する
想定例として、自宅と預貯金を持つ人が、配偶者の生活を守りたい場合を考えます。自宅を残すだけで生活費や維持費が賄えるのか、共有持分や借入れがないか、他の相続人との関係をどう考えるかを確認します。
希望する配分と、その配分で生活が成り立つかは別の論点です。また、公正証書を選んだことだけで遺留分等の問題がなくなるわけではありません。[2] 紛争が見込まれる場合の法的な検討や交渉は、弁護士への相談が必要です。
検認と、死亡後の手続も確認する
自宅等で保管する自筆証書遺言では、原則として家庭裁判所の検認が必要です。公正証書遺言と、法務局に保管された自筆証書遺言は検認が不要とされています。検認は遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。[4]
検認の要否だけでなく、誰が遺言の存在を確認し、金融機関や不動産に関する手続を進めるかを考えます。遺言執行者を指定する場合も、本人の承諾や実際に担える業務、専門職との役割分担を整理しておくと、作成後の見通しが立ちます。
相談前に用意するメモ
最初から全資料をそろえる必要はありません。①家族関係の概要、②主な財産と負債、③誰に何を残したいか、④以前の遺言の有無、⑤体調や手続上の配慮事項をメモにしてください。不明な点は空欄のまま区別します。
当事務所では、ご希望と資料を整理し、遺言書作成支援の範囲をご案内します。公正証書そのものの作成は公証人が行い、登記・税務・紛争対応は、それぞれの業務を扱う専門職への相談が必要です。
参考資料
[1] 政府広報オンライン「知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方」
[2] 日本公証人連合会「遺言」
[3] 法務省「遺言書保管制度とは?」
[4] 裁判所「遺言書の検認」
本記事は一般的な解説です。実際の対応には、最新法令・通知・自治体運用・個別事情の確認が必要です。想定例は説明のためのもので、当事務所の受任実績を示すものではありません。
事情を整理するところから、ご相談ください
分かる範囲で、現在の状況と確認したいことをお知らせください。内容を確認し、対応範囲と進め方をご案内します。