はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
34. 遺言執行者は誰に頼むか――名前を書く前に、役割・引継ぎ・費用を整理する
専門記事・実務研究|遺言・相続・終活
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
遺言を書いても、亡くなった後に誰が手続を進めるかが曖昧だと家族は動き出せません。遺言執行者に頼むことと、別に準備することを分けて考えます。
この記事で確認すること
1. 遺言執行者は、遺言の内容を実現する人
2. 家族に頼むか、専門家に頼むかを判断する材料
3. 財産の一覧と、権限を確認する資料を分ける
4. 費用は、執行報酬とそれ以外を分けて聞く
5. 葬儀・死後事務・家族への連絡との境界
6. 依頼前の確認とQ&A
遺言執行者は、遺言の内容を実現する人
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な行為を行う立場です。財産や遺言の内容によって具体的な仕事は変わります。「葬儀も、家の片付けも、家族の争いも、すべて任せる人」とひとまとめに考えると、依頼の範囲にずれが生じます。
民法は、遺言による執行者の指定、任務の開始、遺言内容の通知、財産目録の作成・交付、執行に必要な権限等を定めています。執行者が指定されていない場合やいなくなった場合には、利害関係人の申立てによる家庭裁判所の選任という手続もあります。どの手続が必要かは、遺言の内容と現在の状況から確認します。
家族に頼むか、専門家に頼むかを判断する材料
家族に頼む場合は、本人が引き受ける意思を持っているか、財産を把握できるか、平日の手続や関係者への連絡に対応できるかを確認します。親族だから負担が小さいとは限りません。居住地、健康状態、仕事、他の相続人との関係も検討材料です。
専門家に頼む場合は、肩書だけで決めず、対象財産、対応できる業務、報告方法、保管資料、報酬、他の専門職が必要な場合の進め方を確認します。候補者が将来も対応できるとは限らないため、連絡先の更新や、引受けが難しくなった場合の見直し方法も決めておきます。
相続人の一人を候補にする場合も、特定の人の希望を通す役割ではなく、遺言内容に沿って事務を進める役割であることを共有します。対立が予想される事情は隠さず、作成段階で弁護士等への相談が必要か検討してください。
財産の一覧と、権限を確認する資料を分ける
実務上は「何があるか」と「何をしてよいか」の二つを整理します。財産一覧には、不動産の所在、金融機関・支店、証券口座、債務、継続して支払っている費用、資料の保管場所を記載します。不明な項目を推測で埋めず、確認先を残します。
一方、どの財産を誰にどう渡すか、処分が必要か、執行者の権限はどう定められているかは、遺言本文と法令に基づく別の確認です。財産一覧や家族向けメモを書いただけで、遺言の内容が変更されるわけではありません。口座番号等の一覧は更新しても、遺言の変更が必要な事項は正式な方式で検討します。
暗証番号やパスワードを一括して渡す方法は避け、金融機関等の正式な相続手続を前提に準備します。連絡先の一覧も、本人の意思と情報管理に配慮して保管します。
費用は、執行報酬とそれ以外を分けて聞く
見積りを確認するときは、基本報酬だけでなく、財産調査、遠方への訪問、証明書、郵送料、不動産の処分等に伴う費用がどの範囲に含まれるかを確かめます。税務申告、登記、紛争対応など別の専門職の業務が必要な場合は、その費用と依頼先も分けます。
報酬を定める場合は、計算の基礎となる財産の範囲や評価時点、最低額、追加条件、途中で継続できなくなった場合の扱いを確認します。将来の財産構成が変わる可能性もあるため、現在の金額だけで長期の負担を判断しないことが大切です。
葬儀・死後事務・家族への連絡との境界
例えば、遺言を確認する前に葬儀の手配が必要になることがあります。執行者を指定してあることと、死亡直後の連絡体制ができていることは別です。病院等の連絡先、葬儀についての希望、住居やペットへの対応は、誰がどの根拠で動くかを別途整理します。
死後事務の契約を検討する場合も、遺言による財産の承継と矛盾しないか、支払資金をどう準備するか、残金や資料を誰に引き渡すかを確認します。財産を受け取る人に説明されない支出が増えると、手続後の確認が難しくなります。
依頼前の確認とQ&A
□ 候補者へ役割を説明し、意向を確認したか。
□ 財産と資料の保管場所を整理したか。
□ 報酬・実費・他士業費用を区別したか。
□ 死亡直後の連絡と死後事務を別に決めたか。
Q. 遺言に名前を書けば、候補者は必ず引き受けますか。
A. 指定と就職の承諾は別です。無断で記載して準備を終えたと考えず、事前に候補者の意向と対応範囲を確認してください。遺言作成後も、連絡が取れる状態かを折に触れて確かめます。
当事務所では、遺言作成に向けた家族・財産・希望の整理と文書化を支援します。裁判所への申立書作成・代理、登記申請、税務申告、紛争交渉は、担当できる専門職へ相談する範囲として整理します。
根拠・参考資料
e-Gov法令検索:民法(1006条・1007条・1010条~1012条等)
制度の説明と、実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。例示は架空の検討例です。実際の対応は最新の法令・通知・申請先の運用と個別事情を確認して判断します。
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