はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
60. 親の判断力が心配になったときの遺言――家族が代わりに決めない準備
専門記事・実務研究|遺言・相続・終活
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
判断力が気になり始めた段階では、急いで署名だけをもらう方法は適切ではありません。本人の希望を確認する環境、財産と家族関係の資料、公証人等への相談の進め方を整理します。
この記事で確認すること
1. 病名だけでも、会話の印象だけでも決めない
2. 本人が話せる条件を整える
3. 資料は本人の判断を助けるために作る
4. 面談記録を「能力の証明書」にしない
5. 急ぐ理由と、進められない場合を整理する
6. 相談で確認する範囲
実務で使う確認表
| 準備する情報 | 注意点 |
|---|---|
| 本人の希望 | 家族の希望と区別する |
| 理解を助ける資料 | 家族関係・財産・負債を簡潔に |
| 面談の条件 | 体調・時間帯・補助具・同席者 |
| 専門家への確認 | 診断・公証・紛争の役割を分ける |
病名だけでも、会話の印象だけでも決めない
遺言は本人の意思に基づいて行うもので、作成時にその内容を理解して判断できる能力が問題になります。認知症という病名だけで一律に結論付けることも、日常会話ができるから複雑な遺言も理解できると決めることも避けます。財産の内容、分け方、本人の状態を具体的に確かめます。
遺言の作成を家族や成年後見人が代理することはできません。公正証書遺言を検討する際は、本人の状態を公証人へ正確に伝え、必要な資料や面談方法を相談します。診断書等があれば足りると自己判断せず、どのような資料が求められるか事前に確認します。
本人が話せる条件を整える
疲れにくい時間帯、聞き取りやすい環境、眼鏡・補聴器等の必要性、説明する資料の量を検討します。話す速度を落とし、財産や相手の名前を分かりやすく示します。本人が答える前に家族が説明を完成させてしまうと、本人自身の理解と希望が確認しにくくなります。
同席する人の影響にも注意します。特定の財産を受け取る人が常に隣にいると、本人が別の希望を言いにくい場合があります。面談方法は公証人等と調整し、本人の言葉を聞ける機会を確保します。長時間の面談を一度に行うことが、かえって負担となる場合もあります。
資料は本人の判断を助けるために作る
家族関係図と財産一覧を簡潔に作ります。自宅の持分、預金、借入れ、既存の遺言、過去に行った重要な贈与等を整理し、何を誰に残したいかを確認します。本人が把握していない財産を含む文案に、理解の確認をしないまま署名を求めてはいけません。
架空例として、本人は自宅だけを長男に残すつもりなのに、準備された文案が全財産を長男へ渡す内容になっている場面を考えます。文章を読み上げた事実だけでなく、その違いが本人に伝わっているかが問題になります。文案を先に固定せず、本人の希望から組み立てます。
面談記録を「能力の証明書」にしない
面談日時、同席者、本人の言葉、用いた資料、説明と確認の方法、休憩等を事実として残すことは有用です。ただし、その記録だけで遺言能力が法的に確定するわけではありません。「問題なし」という一言より、どの質問にどのように答えたかを、誘導を避けて記録します。
医療情報を集める場合は必要性と取扱いを確認し、本人の同意等の適切な手続を踏みます。家族の希望に合う結論を得るために資料を選別したり、答えを練習させたりしないことが重要です。記録は本人の意思と作成過程を正確に残すためのものです。
急ぐ理由と、進められない場合を整理する
入院、手術、転居等の事情があれば、公証役場へ早めに伝え、出張等を含め対応可能な方法を確認します。日程を急ぐことと、意思確認を省くことは別です。公正証書で作れば後から有効性が争われない、と保証することもできません。
本人の意思を適切に確認できず遺言作成が難しい場合は、無理に進めません。生前の生活・財産管理に必要な支援を別に整理し、後見等の制度について専門家へ相談します。後見制度を使えば代わりに遺言が作れるという関係にはありません。
相談で確認する範囲
本人が希望していること、判断力が心配になった具体的な場面、家族関係、財産の概略、既存の遺言、希望時期をお知らせください。初回から診療記録一式を送る必要はなく、必要な資料を確認してから準備します。家族だけの希望である部分は、そのように区別して伝えてください。
当事務所は、本人の意思を尊重した資料整理や公正証書遺言の準備を支援します。医療診断は医師、公正証書作成に必要な確認は公証人、遺言の有効性に関する紛争は弁護士の領域です。相談段階で作成可能性を断定しません。
根拠・参考資料
日本公証人連合会「公正証書は本人でなければ作成できないのか」
制度の説明と実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。架空例は説明のためのもので、当事務所の受任実績ではありません。実際の対応は最新の法令・通知・自治体や提出先の運用と個別事情を確認して判断します。
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状況を整理して相談する
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