はまなす行政書士事務所
行政書士 角屋敦士
56. 「虐待か確信がない」段階でどう動くか――事業所内の報告と外部通報を分ける
専門記事・実務研究|障害福祉・児童発達支援
作成・参考資料確認日:2026年9月29日
職員の強い叱責や不自然な介助を見ても、証拠がそろうまで動けないと思っていませんか。施設従事者等による虐待が疑われる場面で、安全確保・事実記録・外部通報を進める基本を整理します。
この記事で確認すること
1. 確定させてから通報する制度ではない
2. 最初の対応は本人の安全確保
3. 見たことと聞いたことを区別して残す
4. 内部報告で止めず、外部につなぐ
5. 家族対応と職員対応を混同しない
6. 平時に作っておく一枚の手順
実務で使う確認表
| 優先する行動 | 確認すること |
|---|---|
| 安全確保 | 現在の危険・負傷・救急等の必要性 |
| 事実記録 | 直接見たこと・伝聞・不明点を区分 |
| 外部通報 | 窓口・連絡時刻・内容・指示 |
| 継続対応 | 本人支援・資料保全・再発防止 |
確定させてから通報する制度ではない
障害者虐待防止法は、虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合の速やかな通報を定めています。「虐待と確定した」「本人や家族が苦情を出した」ことだけを出発点にする制度ではありません。この記事では、障害者福祉施設従事者等による虐待が疑われる場面を中心に説明します。
障害児の家庭、学校、入所施設等では、児童福祉法など別の制度や窓口が関係する場合があります。対象施設と行為者を確認し、窓口が不明でも自治体へ相談して適切な通報先につなぎます。管轄を調べ続けることを理由に、危険な状況への対応を止めないことが必要です。
最初の対応は本人の安全確保
目の前で危険が続いている場合は、本人を安全な場所へ移すなど、職員自身の安全にも配慮しながら被害の拡大を防ぎます。負傷や急変、差し迫った危険があれば救急・警察等へ連絡します。書式の完成や管理者の承認を待つことを優先しません。
対応する職員、ほかの利用者の支援を継続する職員、連絡を行う職員を分担します。疑いを受けた職員と本人が接触する状況についても、管理者が安全上の措置を検討します。これは事実認定や懲戒の結論を先に決めることとは異なります。
見たことと聞いたことを区別して残す
記録には、日時、場所、関係者、見聞きした言葉と動作、本人の様子、対応内容を具体的に書きます。「ひどい対応だった」という評価だけでなく、どの部位にどのような接触があり、どんな言葉が発せられたかを、把握できた範囲で残します。見ていない部分を推測で埋めません。
本人へ何度も同じ質問をしたり、特定の回答へ誘導したりすると負担や混乱が生じます。本人が話した言葉と質問内容を記録し、詳細な聴取は自治体等と調整します。映像・勤務記録等は適切に保全し、職員の私物端末やSNSに広く共有しません。
内部報告で止めず、外部につなぐ
上司への報告は重要ですが、それだけで必要な外部通報が済んだことにはなりません。施設従事者等による虐待について、市町村への通報につなぐ手順と担当を決めます。上司が不在、上司自身が関係している、通報を止められた場合にも、職員が外部窓口へ直接連絡できるようにします。
通報時点で不明な点は不明と伝えます。事実、推測、伝聞を分け、本人の現在の安全、事業所の対応、残っている資料を説明します。担当窓口、連絡時刻、伝えた内容、追加対応の指示を記録します。守秘義務を理由に通報自体を封じる扱いはしません。
家族対応と職員対応を混同しない
家族へ説明する際は、確認済みの事実、未確認事項、安全確保策、今後の連絡予定を分けます。調査前に「虐待ではない」と否定したり、職員個人の問題だけにして終えたりしません。説明の範囲や時期は本人の意向と安全、自治体の調査等との関係を踏まえて検討します。
通報者への不利益な扱いを防ぐことと、関係職員の言い分を適切に確認することは両立させる必要があります。処分や労務紛争は弁護士・社会保険労務士等の専門領域も関係します。運営上は、勤務配置、支援方法、管理者の把握、研修、相談体制のどこに課題があったかを検討します。
平時に作っておく一枚の手順
「危険時の連絡」「外部通報先」「内部の担当と代替担当」「事実記録の保管先」を一枚にまとめます。研修では、管理者不在や職員間の意見不一致の場面も扱います。委員会開催や研修の記録があっても、現場の職員が相談先を知らなければ仕組みは十分に機能しません。
当事務所では、虐待防止の規程、通報手順、研修・委員会記録等の整合を整理します。現に疑いがある場合は当事務所への相談を待たず、自治体等へ速やかに連絡してください。虐待該当性の最終判断や紛争交渉を行政書士が担うものではありません。
根拠・参考資料
厚生労働省「虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合の通報」
制度の説明と実務上の整理方法の提案を分けて記載しています。架空例は説明のためのもので、当事務所の受任実績ではありません。実際の対応は最新の法令・通知・自治体や提出先の運用と個別事情を確認して判断します。
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