「今日もできませんでした」で終わらせない|保護者に困った場面を伝える言葉
こころの広場 | 2026年10月15日公開
お迎えの時間。「今日も片付けができませんでした」と伝えたあと、保護者の表情が曇った。隠したかったわけではなく、正確に知らせたかった。それでも、言葉がうまく届かなかった気がする。そんな日のために、困った場面を伝える順番を考えてみます。
この記事の要点
子どもへの評価だけで終えず、「何が起きたか」「こちらがどう支えたか」「次に何を確かめるか」を伝えます。気になることを曖昧にせず、家族だけに解決を預けないための会話です。
最初の一歩: 「できなかった」という一文を、見た行動と、その前後の状況に分けて書いてみてください。
この記事の目次
こんな場面から考えます
以下は説明用に作った会話です。「今日は片付けの声を掛けたあとも、積み木を握っていました。作品を写真に残してから箱を近くに置くと、二つ入れられました。次も、終わる前に見通しを伝える方法を試したいと思います」。同じ場面でも、子どもの様子と大人がした支援が一緒に見えてきます。
1.「できない」は、場面を省略しすぎることがある
片付けができなかったといっても、何を終えるのか分からなかったのか、作った物を崩したくなかったのか、次の予定が不安だったのかは、まだ分かりません。見た行動と、その理由についての推測を分けておくと、話を急いで決めつけずに済みます。
「声を掛けると泣いた」は観察した出来事ですが、「わがままだった」は大人の解釈です。解釈をすべてなくす必要はありません。ただ、「こう感じたのかもしれません。まだ確かめているところです」と言えるように、事実と仮説を別にします。
2.支援者が何をしたかも、同じ重さで伝える
困った行動だけを報告すると、家庭には「家で直してきてください」という宿題として届くことがあります。こちらが何を試し、どんな反応があったかを添えると、園や事業所で支援を考えていることが伝わります。
うまくいかなかった働きかけも、隠す必要はありません。「声を掛ける回数が増えたので、次は伝える言葉を短くしてみたい」と、大人側の調整を言葉にします。子どもを変える話だけにせず、関わり方や環境を見直す話にすることができます。
3.三つの短い文にすると、伝える軸を持ちやすい
長く丁寧に説明しようとして、かえって要点を見失う日もあります。そんなときは、まず三文にしてみます。一文目で出来事、二文目で支援と反応、三文目で次に確かめること。これは決まった話法ではなく、話す前の整理の方法です。
伝え方を整えても、保護者がすぐ納得するとは限りません。驚いたり、疲れていたり、違う経験を持っていたりします。説明の後には、相手の受け止めを聞く余地を残してください。
| 伝える内容 | 会話の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 見た事実 | 遊びを終える声掛けの後、積み木を握っていました | 人格や性格の評価にしない |
| こちらの支援 | 写真を撮り、箱を近くへ置くと二つ入れられました | 子どもだけを課題にしない |
| 次の確認 | 次は終わりの見通しを先に伝えてみます | 家庭への要求だけで終えない |
| 家庭の様子 | おうちでは、遊びの終わりはどんな様子ですか | 違いを矛盾や誤りと決めない |
4.「家ではできます」は、支援の手掛かりになる
保護者から「家ではできています」と返ってきたとき、こちらの観察を否定されたと感じることがあるかもしれません。でも、家庭と集団の場では、人数、音、時間の流れ、慣れた相手などが違います。両方が本当である可能性があります。
「家ではどんな声掛けや流れでしょうか」と、できる条件を教えてもらう。事業所でもそのまま再現できるとは限りませんが、試せる手掛かりが得られることがあります。どちらの見方が正しいかを決める会話から、条件を探す会話へ戻してみます。
5.重要な出来事は、褒め言葉で薄めない
困ったことを伝える前後に必ず褒める、という形に頼りすぎると、何を共有したかったのかが分からなくなることがあります。良かった場面も伝えながら、事故やけが、安全に関わる出来事は、事実と対応をはっきり説明します。
その場で詳しく話せない内容や、プライバシーに関わる話は、玄関でほかの家庭に聞こえる形で続けず、場所や時間を調整します。重大な出来事は、日常の言葉選びだけで処理せず、園・事業所の報告や対応の手順に沿って、管理者等と共有してください。
6.「今日は答えが出ない」を、次の約束につなげる
保護者から理由を尋ねられても、その場では分からないことがあります。「様子を見ます」だけでは、何をいつまで見るのかが伝わりません。「次の利用時に、活動の前の伝え方を変えて様子を確認し、金曜日にお伝えします」のように、確認することと返答の機会を具体的にします。
一人で約束できない内容は、チームに確認してから返します。家庭への説明を担当者個人の力量だけに任せず、共有した内容と次の行動を記録する。短い会話でも、支援につながる形で終えられると、翌日の自分も少し動きやすくなります。
よくある質問
悪いことを伝えると、保護者が傷つくのではと心配です。
伝えるべき事実を隠す必要はありません。人格の評価を避け、場面と支援を具体的に伝えます。伝え方や対応が難しい場合は、事前に管理者や同僚と説明内容を確認しておくこともできます。
家での対応をお願いしてはいけませんか。
協力を相談することはできます。ただ、家庭が実際にできることや負担を聞き、園・事業所がすることも一緒に決めます。一方的な課題の持ち帰りになっていないか確かめます。
明日、一つだけ試すなら
- 観察した事実と推測を分ける
- 自分たちが試した支援を一つ添える
- 家庭での様子を、否定せず尋ねる
- 次に確認することと返答の機会を決める
参照資料と編集について
[1] こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」家族支援・保護者との関わり →
確認日:2026年10月15日。子どもと家族を支える考え方を参考に、編集部が構成した実践上の提案です。会話例は架空であり、特定の子どもの状態や行動の原因を判断するものではありません。
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子どもに向き合うあなたに、ひと息を。
読むだけでも、大丈夫です。今の自分に合う使い方で、立ち寄ってください。
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