相続した実家を売る前に|古い契約書を捨てないための書類整理
親が買ったときの契約書は、売却後の税金を考える資料になります。名義、取得費、境界、解体の予定を分け、相談前に残したい書類を整理します。
監修:はまなす行政書士事務所 / 行政書士 角屋敦士 | 2026年10月15日
実家の片付けで、茶色くなった封筒が出てきました。中には何十年も前の売買契約書。「もう相続したのだから、古い書類はいらないだろうか」。売却を考えているなら、その封筒は捨てずに残してください。親が買ったときの情報が、今後の売却や税金の確認に役立つことがあります。
この記事の要点
相続した家を売るときは、今の価格だけでなく、誰の名義か、親がいつ・いくらで買ったか、境界や建物の資料があるかを確認します。片付けと書類の処分を一緒に進めすぎないことが大切です。
最初の一歩: 「購入時の資料」「相続・名義の資料」「建物・境界の資料」の三つの袋を作り、分からない書類は捨てずに保留へ入れてください。
この記事の目次
こんな場面から考えます
以下は説明用の例です。兄弟で実家を売る話がまとまり、荷物を片付け始めました。古い契約書を処分しかけたところ、不動産会社から購入時の資料を尋ねられました。相続税の評価額も、今の査定額も、親が買った代金をそのまま示すものではなかったのです。
1.査定を頼む前に、名義と話合いの現在地を確認する
不動産会社への査定の相談と、実際に売却する権限・手続きを整えることは、分けて進められます。登記上の所有者、土地と建物の名義、共有者、相続の分け方が決まっているかを整理し、相談時に伝えます。祖父母の名義のままなら、その事情も隠さず最初に知らせてください。
売却の準備を始めたことだけで、相続登記の義務がなくなるわけではありません。法務省の案内を確認し、名義の引継ぎと売却までの登記の進め方は司法書士等へ相談します。[1] 売れる見込みと、必要書類がそろう時期の両方を見て、日程を考えます。
2.相続時の評価額を、購入代金の代わりにしない
相続した不動産の取得費は、原則として親など被相続人が購入した代金や購入手数料等をもとに計算します。取得した時期も引き継ぐのが基本です。[2] 「相続した日の時価で買い直した」と考えると、売却後の税金の見通しを誤りやすくなります。
固定資産税の評価額、不動産会社の査定額、相続税の評価額は、それぞれ目的が違います。数字が書かれた書類だからといって、同じ欄に入れないようにします。建物には減価償却の調整などもあるため、古い契約書の金額だけで自分の税額を確定させず、税理士へ渡す材料として整理します。
3.購入時の封筒から、残したい資料を拾う
売買契約書のほか、購入時の仲介手数料の領収書、代金の支払いが分かる記録、建築・増改築関係の契約書などが見つかることがあります。何が取得費に含められるかは資料と事情によって確認が必要ですが、その判断の前に捨ててしまわないことが出発点です。
原本が見つからないときは、どこを探したかと、写しや手掛かりがないかをメモします。購入当時の取引先等へ照会できる場合もありますが、必ず再取得できるとは限りません。数字を記憶だけで補って書類を作るのではなく、確認できる資料と不明な点を分けます。
| 資料のまとまり | 探す書類の例 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 購入したとき | 売買契約書、購入費用の領収書、支払記録 | 税理士・取引に関わった会社等 |
| 相続と名義 | 遺言・協議書、登記関係の資料 | 司法書士・相続手続きの担当者 |
| 土地・建物の状態 | 測量図、境界関係、建築・改修の資料 | 不動産会社・土地家屋調査士等 |
| 売却に向けた支出 | 仲介・測量・解体等の見積書と領収書 | 不動産会社・税理士 |
4.取得費が分からないときも、処分前に一度相談する
国税庁は、取得費が分からない場合などに、売却額の5%相当額を取得費とする取扱いを案内しています。[2] ただ、それを知って「どうせ分からないから」と資料探しを打ち切る前に、手元の資料で何が確認できるかを税理士へ相談してみてください。
古い契約書がある場合とない場合で、計算の材料は変わります。もっとも、資料が見つかれば必ず税金が安くなると約束できるものでもありません。大切なのは、売却を決めた後で資料不足に気づくことを減らし、確認できる条件を先にそろえることです。
5.解体を決める前に、売却と税務の条件を合わせる
「空き家だから先に壊そう」と決める前に、建物を残して売る場合と、解体して売る場合の見込み、費用、日程を不動産会社へ確認します。税務上の特例には個別の条件や期限があるため、適用できると決めつけて工事を進めません。
解体や測量を先行させる場合も、誰が発注し、誰が費用を負担するかを家族で確認します。共有の不動産や分割前の不動産では、代表者が一人で判断できる範囲に注意が必要です。売却価格だけでなく、支出と税金を含めた手取りの見通しを比べます。
6.見積りと実際の支払いを、同じ表に残す
仲介手数料、測量、解体、家財整理などの支出は、目的も税務上の扱いも一律ではありません。まとめて「売却費用」と書くだけでなく、支払先、内容、日付、金額、領収書の場所を記録します。どの費用が税務上控除等の対象になるかは、税理士が判断できるように資料を渡します。
家を売ったあとも、取得時・売却時の資料と申告関係書類をまとめて保管します。実家は手放しても、取引の記録は手元に残す。その準備を片付けの最初に始めれば、後から同じ封筒を探し直す負担を減らせます。
よくある質問
固定資産税の通知書だけあれば十分ですか。
物件の手掛かりにはなりますが、購入代金、境界、登記、建物の状態をすべて確認できるものではありません。目的ごとに必要な資料を整理します。
古い契約書が見つかるまで査定も頼めませんか。
資料が不足していることを伝えて、査定の相談から始めることはできます。売却条件や税額まで確定できるという意味ではなく、不足資料と確認の順番を相談します。
次にすること
- 土地と建物の名義・共有者を調べる
- 購入時の契約書や支払記録を保留せず確保する
- 評価額・査定額・購入代金を区別する
- 解体前に売却と税務の条件を確認する
- 支出の内容と領収書の場所を記録する
参照資料と編集について
[2] 国税庁「No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」 →
制度情報の確認日:2026年10月15日。具体例は説明用です。譲渡所得の計算や特例の適否は税理士・税務署、登記は司法書士等へ確認してください。
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