まず押さえたいこと

相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人でなかったものとされます。先順位の相続人が全員いなくなると、次順位の人が相続人になることがあります。放棄した子の子が、その放棄だけを理由に代襲相続するわけではありません。[1][2]

最初の一歩:配偶者・子とその代襲者・父母等・兄弟姉妹を、亡くなった人との関係で並べた家族図を作ります。

この記事の目次

1.兄が放棄しただけで、叔父へ移るとは限らない

説明用の例です。父が亡くなり、母と子二人が残りました。長男だけが放棄した場合、もう一人の子が相続人である間は、父の兄弟姉妹が直ちに相続人になるわけではありません。放棄した人の名前を消すだけでなく、同じ順位に誰が残るかを見る必要があります。

配偶者は、子・直系尊属・兄弟姉妹という順位とは別に考えます。配偶者自身が放棄するか、先順位者が誰かを区別し、「家族の中で次に年上の人へ移る」という理解は避けてください。[2]

2.子の放棄と、子が先に亡くなっていた場合は違う

代襲相続は、相続開始前の死亡、相続欠格・廃除など、法律の定める事情で問題になります。子が相続放棄をしたという事情自体は、代襲相続の原因ではありません。子が放棄したから孫にも必ず放棄をさせる、とは決めません(民法887条・939条)。[1]

状況確認する方向
子の一人だけが放棄他の子や既に代襲相続人となっている人の有無
子の順位の相続人が全員いなくなる生存する父母・祖父母等の有無
子の順位も直系尊属もいない兄弟姉妹・その代襲者である甥姪の有無
子が被相続人より先に死亡その子の子等が代襲相続人となるか
配偶者だけが放棄子等の順位がどうなるかを別途確認

3.次順位の人の3か月を、同じ死亡日から数えない

熟慮期間の原則は、各人が自分のための相続開始を知った時から3か月です。先順位者の放棄により後から相続人となった人は、死亡を知った日だけでなく、自分が相続人となった事情をいつ知ったかが重要です。[3]

「私が放棄した日から親族全員の期限が同じように始まる」とも断定できません。連絡した日、伝えた内容、受理通知等を受け取った日を残します。届いた債権者の請求書から事情が分かる場合もあるため、各人の認識を整理してください。

4.連絡は、放棄を迫るためではなく、判断材料を渡すために

相続放棄には、次順位者全員の同意が必要という仕組みはありません。一方、事情を知らない親族へ突然請求が届くと、調査の時間を失うことがあります。連絡が可能で支障がなければ、死亡日、放棄が受理されたこと、把握している債務、相談先を簡潔に伝えることが実務上役立ちます。

説明は事実に限ります。「あなたも絶対に放棄しなければいけない」「この金額しか借金はない」など、本人の選択や未確認の財産を断定しません。関係が悪化している、所在が不明、連絡に危険がある場合は、無理に直接会わず対応方法を専門家と相談します。

5.放棄後に家や家財を占有している場合

放棄をした時に相続財産を現に占有している人は、相続人または相続財産清算人へ引き渡すまで、自分の財産と同一の注意で保存する義務が問題になります。すべての放棄者に同じ管理義務が無期限に生じる、という説明は正確ではありません(民法940条)。[1]

逆に、放棄したから鍵を放置してよい、家財を自由に売ってよい、ということにもなりません。誰が現に占有しているか、何を保存し、誰へ引き渡すかを確認します。全員が放棄した場合の清算人選任等も、個別の事情に応じて検討します。

よくある質問

親族全員で一枚の書類を出せば放棄できますか。

放棄の意思と手続きは各人について必要です。未成年者や利益相反の問題がある場合も含め、各人の申述に必要な資料を家庭裁判所等へ確認してください。

次の相続人に連絡しないと、私の放棄は無効ですか。

次順位者への通知は、相続放棄の法律上の成立要件ではありません。ただし、円滑な調査や家財の引継ぎのために、可能な範囲の情報共有を検討します。

今日の確認メモ

  • 配偶者と順位を分けて家族図を作る
  • 先順位の全員の状況を確認する
  • 伝えた日と資料を記録する
  • 占有中の家・家財の保存と引渡しを確認する

根拠となる公式資料

[1] e-Gov法令検索「民法」

[2] 国税庁 No.4132「相続人の範囲と法定相続分」

[3] 裁判所「相続の放棄の申述」

制度確認日:2026年10月17日。日本の一般的な相続・遺言手続きを説明しています。事例・金額は説明用です。作成日・死亡日等による経過措置や個別の事情で結論は変わります。税務は税理士・税務署、登記は司法書士等、紛争・権利行使は弁護士にご確認ください。

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