外国人を採用した、その後は? 就労先の見直しから考える雇用と暮らし

外国人の採用が決まり、ようやく勤務を組めるようになった。人手不足に悩む事業者にとっては、ほっとする場面でしょう。本人にとっても、収入を得て経験を積める仕事が見つかったことには意味があります。

ただ、採用が決まった日から、別の確認も始まります。どの仕事を、何時間できるのか。契約の説明は伝わっているか。事情が変わったときに、誰へ相談すればよいのか。雇用は、求人が埋まったところで完了するわけではありません。

2026年10月1日から、在留資格「家族滞在」の人について、一部の就労先で、個別の資格外活動許可により働ける取扱いが始まりました。この限定的な変更をきっかけに、働く機会と、働き続ける条件を一緒に考えてみたいと思います。[1]

まず、今回の変更と受入れ人数の議論を分けたいと思います

外国人の就労が話題になると、「受入れを増やすべきか、減らすべきか」という議論につながりがちです。ただ、今回は、既に日本に在留する特定の人の就労先を、条件付きで見直す取扱いです。新たな受入れ枠を増やす変更とは違います。

対象は「家族滞在」で、「留学」等は今回の変更の対象外です。また、ほかの仕事を含む資格外活動の合計は週28時間以内で、従来の包括許可だけで対象の仕事を始められるわけではありません。[1]

働ける場所が増えたと聞いても、誰でも、どのような働き方でもよくなったわけではないのです。採用する側も、本人の在留資格と許可内容を具体的に確認する必要があります。

まじめに働く人でも、時間の管理には仕組みが要ります

例えば、二つの職場で働く人を考えてみます。それぞれの職場で見る勤務時間は少なくても、合計すれば、許可された時間を超えることがあります。本人が別の仕事を追加したことを、一方の雇用主が知らない場合もあるでしょう。

ここで「本人はまじめだから大丈夫」と考えてしまうと、確認すべき条件が抜けます。人柄の問題と、働き方の管理は別です。本人が制度を理解しているか、変更を伝えられるか、勤務先が必要な確認を続けられるか。その仕組みを用意することが、双方を守ることにつながります。

仕事や収入の見込みが変わることもあります。勤務が減って別の仕事を探したくなったとき、何を確認すればよいか分からなければ、適法な選択肢を探すのも難しくなります。生活が苦しいことによって違法な活動が認められるわけではないからこそ、行き詰まる前に相談できることが大切です。

こうした問題を、本人の善意や雇用主の経験だけで防ぐのは難しいと思います。採用時に説明して終わりにせず、勤務先や働き方が変わった場合の確認方法まで決めておく。そのような小さな手順にも、意味があります。

職場の外にある困りごとは、誰が受け止めるのでしょうか

暮らしには、仕事以外にもさまざまな手続きがあります。住まい、医療、子どもの学校、行政から届く通知。必要な支援は家庭によって違いますが、職場での説明だけでは解決できないこともあります。

一方で、すべてを雇用主に引き受けてもらうのも現実的ではありません。労働条件の説明や適法な雇用管理など、企業が担う仕事があります。行政や相談機関には、制度の案内や生活上の相談を受ける役割があります。まず、この分担を本人にも分かる形で示すことが必要でしょう。

厚生労働省の案内には、さまざまな仕事や、ハローワークで求人情報を探す方法も示されています。[2]支援が全くないというわけではありません。気になるのは、必要な人がその案内を理解し、実際に相談や手続きへ進めるかという点です。

例えば、相談先の名称だけを渡すのではなく、何を相談できるか、どの言語で対応するか、必要な書類は何かまで確認して伝える。企業が相談をすべて代行しなくても、そこまで案内できれば、本人が動きやすくなる余地があります。

利益と負担を、同じ範囲で見る必要があります

外国人雇用によって、企業は事業を続けやすくなり、本人には収入が生まれます。地域でも、消費や税、担う仕事などを通じた貢献が考えられます。一方、相談や情報提供には人員と費用が必要です。

企業の人手が確保できても、必要な相談対応が地域の限られた窓口へ集中すれば、支援する側が続けられなくなるかもしれません。逆に、支援にかかる費用だけを取り出して、本人や企業、地域に生まれる利益を数えなければ、評価が偏ります。

誰にどの利益が生まれ、どこにどの負担がかかるのか。そこを把握したうえで、企業、行政、支援機関の分担を調整することが必要だと考えます。採用する企業の数や地域の実情に応じて、相談体制を整えるという検討もできます。

人数の話に戻る前に、確かめたいこと

人手不足への対応には、賃金や労働条件の改善、省力化、仕事の組み替えなど、複数の方法があります。外国人雇用も、その中で役割を考える必要があり、今回の限定的な変更だけで受入れ全体の是非は判断できません。

まず確かめたいのは、既に日本で暮らす人が、制度を理解して能力を生かせるか。そして、企業も地域も、必要な対応を無理なく続けられるかです。採用人数だけでなく、適法な就労が続いているか、困りごとを相談につなげられるかまで見ていけば、働ける場所を増やす政策の成果も、より具体的に捉えられるのではないでしょうか。

出典

[1]出入国在留管理庁・2026年10月1日からの資格外活動許可の取扱い。[2]厚生労働省「在留資格『家族滞在』をもって在留する皆さまへ」。

制度・ニュースの確認時点:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士