家から出るのは難しい。でも、誰かと話してみたい。そうした気持ちがあっても、「相談室に来てください」「活動に参加してください」という案内には応えられない子どもがいます。支援が用意されていても、その場所へ行くことが難しいのです。
自宅からアバターで参加できる居場所は、この距離を縮める可能性があります。顔を見せずに同じ空間に入り、初めはほかの人の様子を見るだけでもよい。そうした参加の仕方が認められるなら、人と関わる負担を少し下げられるかもしれません。
大阪市の教育支援センター(メタバース)のモデル事業は、外出が困難で、学校内外の支援等と十分につながれていない不登校児童生徒を対象としています。2026年9月から2027年3月までのモデル実施で、学習、心理の専門家による相談、交流に加え、保護者への支援や学校との連携も予定されています。[1]
私は、このように支援のほうが子どもへ近づく取り組みには、大きな意味があると感じます。そのうえで考えたいのは、そこで生まれた安心や学びを、どう本人の将来につなげていくかです。
オンラインでのつながりも、本人にとっては大切な関係です
仮に、ある子が何度か参加するうちに、顔なじみの相手を見つけたとします。前回の続きの話ができる。自分が来たことに気づいてもらえる。それまで人との関わりが少なかった子にとっては、こうした出来事が、一日の楽しみになることもあるでしょう。
その関係を「まだ外に出られていないから」と小さく評価するのは、もったいないことです。オンラインで誰かとつながり、活動をともにすることも、社会への参加です。外出が増えたかどうかだけでは、本人に起きている変化を捉えきれません。
もっとも、居場所として大切になるほど、関係がうまくいかないときの影響も考える必要があります。嫌な言葉を受けたときに相談できるか。参加したくない日は休めるか。しばらく姿が見えない子に、無理のない方法で声をかけられるか。安心は、公的な場という名前だけで生まれるものではなく、日々の運営によって支えられます。
「いつ学校に戻るのか」だけでは、話が狭くなります
子どもが元気になってきた様子を見ると、大人は「そろそろ学校へ」と考えがちです。本人もそう望むのであれば、その希望を支えることは大切です。ただ、登校できるようになることだけを支援の成果にすると、見落とすものがあります。
例えば、学校に行きづらくなった理由が、そのまま残っている場合です。人間関係、学習の進め方、教室で受ける刺激など、困難の内容は子どもによって違います。本人が安心を取り戻しても、以前と同じ条件で参加できるとは限りません。
文部科学省も、不登校支援を登校という結果だけで捉えず、本人の主体的な進路選択や社会的自立を目指すこと、学校側が受け入れ方や、なじめない要因の解消を検討することを示しています。[2]
子どもを支えることと、子どもが参加しやすい環境へ変えること。この両方が必要なのだと思います。オンラインの支援が充実しても、学校側の課題まで支援者に引き渡してよいわけではありません。
そこで学んだことは、学校にどう届くのでしょうか
安心して参加できるようになり、少しずつ学習にも取り組み始めた。そこで次に気になるのが、「この学びを、学校はどう受け止めてくれるのか」ということです。
欠席中に学校外や自宅で行った学習は、一定の要件の下で、学校の判断により成績評価へ反映できる仕組みがあります。教育課程に照らした学習内容の確認、支援者との連携、本人との継続的な関わりなどが必要です。オンラインの活動に参加すれば、自動的に出席扱いや成績評価になるわけではありません。[3]
例えば、本人が取り組んだ課題や、支援者が把握した学習の様子を、学校が定期的に受け取れるようにする。評価に必要な情報を最初に確認しておく。進路の相談も、学習の状況に沿って続ける。こうした調整があれば、本人の努力が次の選択肢へつながりやすくなります。
逆に、その調整を保護者が毎回一から交渉しなければならないと、家庭の時間や余力によって差が出ます。学校と支援者の間で共有する手順を整えることは、保護者の負担を減らすうえでも意味があります。
次に進む道は、一つでなくてよいと思います
本人が希望したときに、対面の活動へ参加できる。学校内の別室や教育支援センターも試せる。オンラインでの学びを続けながら、進路を考えることもできる。必要なのは、同じ出口へ急がせることより、選べる道を具体的に用意することではないでしょうか。
大阪市の案内では、利用を希望する場合はまず在籍校に相談します。[1]学校との関係に難しさを抱える家庭もあるため、相談が進まない場合の問い合わせ先まで分かりやすく示されていると、利用につながりやすくなると思います。
ログインできた人数の先には、それぞれの子どもの生活があります。相談できる相手ができたか。学ぶ機会が続いているか。本人が少し先のことを考えられるようになったか。そうした変化を確かめながら、学校や行政も支え方を見直していく。メタバースの新しさ以上に、そこにこの取り組みの可能性を感じています。
出典
[1]大阪市「教育支援センター(メタバース)のモデル設置事業」。[2]文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について」。[3]文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」。
制度・ニュースの確認時点:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士

