配偶者居住権がある家は売れる?|施設入所・賃貸・住み替えの進め方

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配偶者居住権がある家は売れる?|施設入所・賃貸・住み替えの進め方

はまなす行政書士事務所|行政書士 角屋敦士
公開・法令等確認:2026年10月12日

家を出ても権利は自動で消えません。売却代金を介護費に使うなら、先に決めるべきことがあります。

『母が施設へ入るので、実家を売って費用に充てよう』。家族としては自然な発想です。しかし、家の所有権が子どもにあり、母には配偶者居住権がある場合、売却代金がそのまま母のものになるわけではありません。家を売る話と、母の権利をどう扱うかを、つなげて整理する必要があります。

この記事で確認できること
施設へ入ることと、権利を手放すことは別
所有者は売却できても、買主が自由に使えるとは限らない
売却代金から、配偶者にいくら渡るのか
売らずに貸す場合は、所有者の承諾と終了時の整理を
話し合いから決済まで、順番をそろえる

選択肢先に確かめること
家を維持する戻る可能性、管理担当、維持費
第三者に貸す所有者の承諾、賃貸契約、権利終了後の処理
権利を消して売る本人の意思、対価・税務、抹消と決済の順序

施設へ入ることと、権利を手放すことは別

いったん適法に取得した配偶者居住権は、施設へ入所しただけで当然に消える制度ではありません。取得時に居住していたことという要件と、取得後の権利の消滅は分けて考えます。[1]

短期の入所で家に戻る可能性があるのか、生活の場を完全に移す予定なのか。まずは本人の希望を確かめましょう。空き家の管理が面倒だからという理由だけで、権利放棄の書類へ署名を求める進め方は避けたいところです。

家を空ける間も、換気、雨漏りの確認、郵便物、保険会社への連絡など、管理は残ります。権利を残す場合には、所有者と管理担当・費用を決めておきます。

所有者は売却できても、買主が自由に使えるとは限らない

配偶者居住権の負担がある所有権を売ること自体は可能です。しかし、居住権の登記があれば、原則としてその権利を買主にも主張できます。買主から見ると、直ちに入居・賃貸できない物件であり、売却の条件や価格に影響します。[1:1031条、2]

そのため、負担のない家として売りたい場合は、配偶者との間で居住権の消滅について合意し、抹消登記まで整えるのが実務上の検討事項になります。所有者だからといって、配偶者の権利を一方的に取り除けるわけではありません。

また、配偶者居住権そのものを他人へ譲渡することはできません。家族間で『居住権を買い取る』と表現する場合も、通常は、権利を移すのではなく、対価を支払って消滅させる合意を指します。この区別は税務や登記の説明にも関わります。[1・3]

売却代金から、配偶者にいくら渡るのか

家の所有権が子どもにあれば、家を売った代金は基本的にその子どもに帰属します。母が介護費を必要としていることだけで、代金の一定割合を当然に受け取れるわけではありません。

居住権の消滅に対して支払う対価、売却経費、税金、施設費用に充てる資金を、それぞれ明確にします。相続のときに用いた評価額が、そのまま数年後の消滅対価になるわけでもありません。

無償・著しく低額で権利を消すと所有者側に贈与税の問題が生じ得る一方、対価を受け取る配偶者側には譲渡所得の検討が必要です。『家族で合意したから税金も問題ない』とはならないため、金額を確定する前に税理士へ確認します。[3・4]

売らずに貸す場合は、所有者の承諾と終了時の整理を

所有者の承諾を得て、配偶者が建物を第三者に使わせたり賃貸したりすることは検討できます。家賃を生活費へ回せる可能性がありますが、無断で貸すことはできません。[1:1032条3項]

ここでは、賃貸人は誰か、家賃を誰が受け取るか、修繕は誰が手配するか、配偶者居住権が死亡などで消滅した後に賃貸関係をどう扱うかを確認します。『貸せば毎月収入が入る』だけで契約すると、後に所有者・借主との調整が必要になることがあります。

配偶者居住権と賃貸借の関係は、承諾内容や契約によって検討が必要です。募集を始める前に、契約を扱う専門家と不動産事業者へ説明し、入居者にも権利の前提を適切に伝える準備をします。

話し合いから決済まで、順番をそろえる

実務では、①本人の希望と判断能力の確認、②登記・担保・契約の確認、③売却・賃貸・維持の比較、④対価と税額の試算、⑤合意書等の作成、⑥売買・支払い・抹消登記の日程調整、という順で整理すると、先走りを防ぎやすくなります。

買主との売買契約を先に確定し、後から母に居住権の放棄を頼むと、合意が得られなかったときの処理が難しくなります。権利消滅の条件、対価の支払時期、登記書類の受渡しを、決済を担当する司法書士などと調整します。

本人の判断能力が低下している場合、家族の多数決で本人の権利を処分することはできません。代理権の有無、成年後見制度の利用、子どもが所有者でもある場合の利益相反などを確認します。成年後見人が関わる居住用不動産の処分等には、家庭裁判所の許可が問題になる場合もあります。個別の行為に応じた確認が必要です。[1:858条・859条の3・860条等]

将来の売却や住み替えまで考えるなら、相続の時点で『誰が家をもらうか』と同じ重さで、『本人が家を離れるときにどうするか』を話しておきたいところです。

ご家族の状況に合わせて、準備を整理したい方へ

はまなす行政書士事務所では、遺言原案の作成、相続人・財産の調査、合意した内容の書類作成などをご相談いただけます。登記は司法書士、税務は税理士、紛争の解決は弁護士の担当となるため、必要な手続きと相談先を整理します。

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確認した法令・公的資料

本文の番号は下記資料に対応します。法律上の要件と、家族で協議するための実務上の提案を区別して記載しています。具体的な適用は、権利関係・遺言・合意内容等により異なります。

1.民法(第1028条〜第1041条ほか)

2.法務省・配偶者居住権等のQ&A

3.国税庁・配偶者居住権等の消滅に関する税務(相続税法基本通達9-13の2を含む)

4.国税庁・所得税基本通達33-6の8(消滅の対価)

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