相続が始まったら配偶者居住権はどう手続きする?|遺言・遺産分割・登記の順番

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相続が始まったら配偶者居住権はどう手続きする?|遺言・遺産分割・登記の順番

はまなす行政書士事務所|行政書士 角屋敦士
公開・法令等確認:2026年10月12日

住み続けているだけでは、長期の権利は完成しません。確認、合意、登記を一つずつ進めましょう。

葬儀が終わると、銀行や名義変更の書類が次々に届きます。そこに『この家は子どもの名義にすればいい』という話が加わると、住み続ける配偶者の権利が後回しになりがちです。配偶者居住権を検討するなら、所有権の行き先と同じ段階で取り上げる必要があります。

この記事で確認できること
まず、遺言・相続人・家の名義・債務を確認する
当面の住まいを守る「短期居住権」と分けて考える
遺産分割では、誰が何を取得するかを一つの案にする
所有権移転と居住権設定は、別の登記として準備する
3か月・10か月・3年を、別々の期限として管理する

段階ここまで確認する
署名前遺言、相続人、家の権利、債務と期限
取得を決めるとき居住権・所有権・預貯金の取得者と費用
登記後権利者・期間、税金・修繕の連絡先

まず、遺言・相続人・家の名義・債務を確認する

最初に確認するのは、遺言書の有無と内容、相続人の範囲、土地・建物の登記、借入れや担保の状況です。配偶者居住権は建物についての権利なので、家族が『自宅』と呼んでいる物件と、登記上の建物が一致するかも確認します。

長期の配偶者居住権は、法律上の配偶者が相続開始時に被相続人の建物に居住していたことなどが前提です。被相続人が建物を配偶者以外の人と共有していた場合は対象になりません。遺産分割や遺贈等による取得の根拠も必要です。[1・4]

遺言で配偶者居住権が遺贈されている場合と、遺言がなく遺産分割で取得する場合では、手続きの根拠が異なります。公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言は検認不要ですが、それ以外の自筆証書遺言等は原則として家庭裁判所の検認が必要です。封印された遺言書は家庭裁判所以外で開封しません。検認は有効・無効を確定する手続きではありません。[1・2]

債務が不明なときは、居住権の協議だけを先に進めないようにします。相続放棄を考える期間は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。調査が間に合わなければ、期間内に家庭裁判所への伸長申立てを検討します。遺産の処分などで単純承認と扱われる問題もあるため、放棄の可能性がある場合は署名・処分前に確認します。[1・3]

当面の住まいを守る「短期居住権」と分けて考える

配偶者短期居住権は、相続直後の居住を保護する別の制度です。亡くなった方の建物に、相続開始時に無償で住んでいたことなどが要件です。要件を満たせば法律上生じますが、長期の配偶者居住権へ自動的に切り替わるわけではありません。

配偶者を含む共同相続人間で建物の遺産分割をする場合、期間は『分割によって建物の帰属が決まった日』と『相続開始から6か月を経過する日』の遅い方までです。それ以外の場合は、建物取得者から消滅の申入れがあった日から6か月を経過する日までです。一律に『死亡から6か月で退去』という説明は正確ではありません。[1・4]

相続放棄をした場合でも短期居住権が成立し得ますが、それを理由に長期の住まいまで確保できたとは考えないことです。当面の保護と、その後の生活設計を並行して確認します。

遺産分割では、誰が何を取得するかを一つの案にする

遺言がない場合などは、遺産分割で配偶者居住権を取得する方法を検討します。建物の所有権、土地、預貯金、配偶者居住権を一覧にし、それぞれの取得者を明確にします。

『母は家に住める。子は家をもらう』という口頭の確認だけでは、権利の内容、期間、登記への協力が曖昧です。対象建物を登記に沿って特定し、終身か有期かを決め、費用負担の合意も別途整理します。評価については、税務用の評価と、家族間で分け方を決めるための評価を混同しないようにします。

配偶者が希望すれば、ほかの相続人の意思にかかわらず必ず取得できるわけではありません。合意できない場合に家庭裁判所が審判で取得を定めるには、民法1029条の要件があります。争いのある事案は弁護士に相談する段階です。[1]

所有権移転と居住権設定は、別の登記として準備する

配偶者居住権を取得したら、第三者に権利を主張するための設定登記を進めます。建物の所有者には登記を備えさせる義務がありますが、協議書を保管しているだけで登記が済むわけではありません。

一般に、取得原因に応じた所有権の登記を整え、居住権の設定登記を行います。設定登記は原則として共同申請ですが、遺贈で遺言執行者がいるかなどによって申請の組合せが変わります。所有権移転とあわせ、司法書士または管轄法務局で確認しましょう。[1・4・5]

2023年4月1日から、相続人に対する遺贈による所有権移転登記には単独申請が認められています。しかし、その仕組みを配偶者居住権の設定登記にそのまま当てはめることはできません。『遺贈なら全部一人で申請できる』とは整理しないことです。[5・6]

用意する資料の例は、遺言書または遺産分割協議書、戸籍等、住所を証する資料、登記識別情報、印鑑証明書、評価資料、委任状です。すべてが全件で必要という意味ではありません。法務局は原因別に様式を公開しているため、実際の申請時点の最新版で必要書類を絞ります。[5]

3か月・10か月・3年を、別々の期限として管理する

相続放棄等の検討期間、相続税の申告期限、所有権の相続登記の期限は、対象も起算点も違います。相続税の申告が必要な場合は、通常、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割が終わっていなくても、原則として期限は延びません。[3・7]

所有権の相続登記は、自己のために相続が開始したことと所有権取得を知った日から3年以内が基本で、遺産分割後の追加的な義務もあります。この3年という期限を、居住権設定登記を先送りしてよい期間と捉えないでください。相続人申告登記も、配偶者居住権の設定登記の代わりにはなりません。[8]

登記完了後は登記事項証明書を取り、対象建物、権利者、期間を確認します。そのうえで、税金の通知先、修繕時の連絡先、書類の保管場所まで整える。ここまでを一区切りにすると、相続手続きが実際の暮らしにつながります。

ご家族の状況に合わせて、準備を整理したい方へ

はまなす行政書士事務所では、遺言原案の作成、相続人・財産の調査、合意した内容の書類作成などをご相談いただけます。登記は司法書士、税務は税理士、紛争の解決は弁護士の担当となるため、必要な手続きと相談先を整理します。

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確認した法令・公的資料

本文の番号は下記資料に対応します。法律上の要件と、家族で協議するための実務上の提案を区別して記載しています。具体的な適用は、権利関係・遺言・合意内容等により異なります。

1.民法(第1028条〜第1041条ほか)

2.裁判所・遺言書の検認

3.裁判所・相続の承認又は放棄の期間の伸長

4.法務省・配偶者居住権等のQ&A

5.法務局・不動産登記の申請書様式(配偶者居住権の設定・抹消)

6.法務局・相続登記・遺贈の登記の手続案内

7.国税庁・No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

8.法務省・相続登記の申請義務化

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