配偶者居住権の固定資産税・修繕費は誰が払う?|親子で決めておきたい費用負担
はまなす行政書士事務所|行政書士 角屋敦士
公開・法令等確認:2026年10月12日
雨漏りの見積書が届いてからでは、話し合いが難しくなる。家を分けるときに、維持する費用も決めておきます。
母が住み、子どもが所有する家。配偶者居住権で落ち着いたはずが、屋根の修理をきっかけに『住んでいる人が払うのでは』『持ち主の仕事では』と行き違うことがあります。家賃が不要であることと、家の維持費が不要であることは違います。
この記事で確認できること
税金の納付先と、家族の中での負担者は違う
修理できることと、代金を請求できることを分ける
バリアフリー工事も、本人だけで決めない
月々の家計と、家の修繕資金を分けておく
家族の合意書には、負担割合だけでなく手順も
| 費用の場面 | 合意で明らかにすること |
|---|---|
| 固定資産税の通知 | 誰が納め、誰がいつ精算するか |
| 通常の維持・修繕 | 内容と負担者、領収書の保管 |
| 高額・緊急の工事 | 必要性、発注権限、立替えと最終負担 |
| 退去・死亡 | 未精算費用と家財の処理 |
税金の納付先と、家族の中での負担者は違う
建物の固定資産税は、配偶者居住権を設定しても、原則として所有者が市町村に対する納税義務を負います。居住権者の名義に納税義務が自動的に移るわけではありません。
一方、民法1034条は、建物の『通常の必要費』を配偶者が負担すると定めています。法務省は、所有者が建物の固定資産税を納めた場合、通常の必要費として配偶者に請求できると説明しています。つまり、公的な納税義務と、当事者間の精算は二つの話です。[1・2]
『今年は子どもが払う』という取り決めをするなら、立替えなのか、最終的な負担なのかを区別して書きます。土地の税金、マンションの管理費・修繕積立金、保険料なども同じ欄に混ぜず、権利関係、規約、契約と費用の性質を確認して整理しましょう。
修理できることと、代金を請求できることを分ける
配偶者は、建物の使用・収益に必要な修繕をすることができます。修繕が必要なのに配偶者が相当の期間内に行わない場合、所有者も修繕できます。また、配偶者が自ら修繕する場合などを除き、修繕の必要を所有者へ遅滞なく知らせる義務があります。[1]
ただし、『誰が工事を手配できるか』と『結局誰が払うか』は別です。通常の必要費は配偶者の負担ですが、それ以外は民法1034条2項などの費用償還の規定に沿って判断します。高額だから必ず所有者負担、小額だから必ず配偶者負担、という金額だけの線引きではありません。
例えば、壊れた設備を元の機能へ戻す工事と、設備をより高性能なものへ変える工事では、検討する費用の性質が違います。価値を増やす有益費には、価格の増加が残っていることなど、償還に条件があります。支払った全額を当然に回収できるとは限りません。[1:1034条2項・583条2項・196条] 費用償還の時期も重要で、返還時の精算が問題になるため、工事後すぐに相手から全額を受け取れることを前提にしないでください。
大きな工事は、必要性、範囲、見積額、手配する人、当面支払う人、最後に負担する割合を、発注前に確認する方が現実的です。緊急の雨漏りなら、安全確保と応急処置を優先しつつ、写真、連絡履歴、見積書・領収書を残します。
バリアフリー工事も、本人だけで決めない
手すりを付ける、浴室を直す、部屋の間取りを変える。介護のための工事は生活に直結しますが、修繕と改築・増築では扱いが違います。配偶者居住権では、改築・増築には所有者の承諾が必要です。工事の名称だけでなく内容を見て判断します。[1:1032条3項]
所有者の承諾、業者との契約、補助制度の利用、費用分担を別々に確認しましょう。補助が受けられることと、所有者の承諾が不要であることは同じではありません。
また、配偶者が負担した改良費を、退去時にどう扱うのかも論点になります。『便利になるから今すぐ工事』と決める前に、後の精算を一度相談しておく意味があります。
月々の家計と、家の修繕資金を分けておく
住居費を毎月の支払いだけで見ると、数年ごとの大きな出費が抜け落ちます。固定資産税、保険、設備の交換、外壁や屋根の工事を、年間支出と臨時支出に分けてください。
仮に家の維持費として月1万円を積み立てるなら年間12万円です。それで足りるかは、建物の状態や工事見積りを見ないと分かりません。金額を先に決めるより、何年以内に何が必要になりそうかを確認してから、預貯金の残し方を決めます。
配偶者の生活費が不足したときに『修理を我慢するしかない』となると、本人の安全にも、所有者の資産価値にも影響します。費用分担は家族の損得だけでなく、必要な工事を止めないための仕組みとして考えたいところです。
家族の合意書には、負担割合だけでなく手順も
例えば次の項目を、家族で協議するたたき台にします。①定期的な税金・保険の精算方法、②修繕の連絡先、③見積りを共有する方法、④発注前に協議する工事の範囲、⑤緊急時の上限と事後報告、⑥退去・死亡時の未精算費用の扱い。
これは法律で一律に決まった様式ではありません。実際の合意内容は家族関係、建物、資力に合わせて整えます。工事業者への支払義務は誰が契約したかにも関わるため、家族間の『半分ずつ』という約束だけで業者への責任まで変わるとは考えないことです。
合意した内容を子どもの配偶者や将来の相続人が当然に理解しているとは限りません。書類の保管場所を共有し、所有者が変わったときの確認も予定しておきます。誰が正しいかで揉める前に、誰が何をするかを見える形にする。それが、住み続ける安心につながります。
ご家族の状況に合わせて、準備を整理したい方へ
はまなす行政書士事務所では、遺言原案の作成、相続人・財産の調査、合意した内容の書類作成などをご相談いただけます。登記は司法書士、税務は税理士、紛争の解決は弁護士の担当となるため、必要な手続きと相談先を整理します。
確認した法令・公的資料
本文の番号は下記資料に対応します。法律上の要件と、家族で協議するための実務上の提案を区別して記載しています。具体的な適用は、権利関係・遺言・合意内容等により異なります。
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