配偶者居住権を遺言で残すには|名義・文言・生活資金の決め方

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配偶者居住権を遺言で残すには|名義・文言・生活資金の決め方

はまなす行政書士事務所|行政書士 角屋敦士
公開・法令等確認:2026年10月12日

「家に住める」は残せても、「暮らしていける」とは限らない。遺言を書く前に、住まいとお金を一緒に考えます。

妻には今の家で暮らしてほしい。家の所有権は、いずれ子どもに渡したい。その二つを両立する方法の一つが、配偶者居住権です。ただし、遺言に名前を書くだけで、どの家にも使えるわけではありません。準備の順番を間違えないことが、残された家族の負担を減らします。

この記事で確認できること
最初に見るのは、遺言のひな型より登記事項証明書
「遺贈する」と明確にし、家の所有権の行き先も決める
終身か、期間を区切るか。更新を前提にしない
配偶者に残すのは、居住権だけで足りるか
相談前に、家族でこの5点を整理する

準備するもの確認したいこと
土地・建物の登記事項証明書共有者、担保、対象建物の特定
年金・預貯金・家計のメモ毎月の不足額と修繕の予備費
家族関係と本人の希望所有権の行き先、住み替えの希望

最初に見るのは、遺言のひな型より登記事項証明書

配偶者居住権は、亡くなった方の法律上の配偶者が、相続開始時に、その方の財産に属する建物に住んでいることを前提とする制度です。内縁の方には、この制度による権利は認められません。建物が賃貸住宅である場合も、配偶者居住権とは別の法的整理になります。

特に見落としやすいのが共有です。建物を夫婦だけで共有している場合は設定の余地がありますが、亡くなる方と子どもなど、配偶者以外の人が建物を共有している場合は、民法1028条の要件を満たしません。『自分の持分だけに付ければよい』とは進められないのです。

土地と建物は別々に確認します。土地が借地である、親族の名義である、抵当権が付いているといった事情も、住み続けるうえで重要です。建物の共有に関する要件を、そのまま土地に当てはめることも適切ではありません。

入院・施設入所中なら、住民票だけで結論を出さず、相続開始時の生活の実態を確認します。また、2020年4月1日より前の遺言でこの権利を遺贈したケースなどは、施行時の経過措置も確認が必要です。[1・2・3]

「遺贈する」と明確にし、家の所有権の行き先も決める

これから遺言を作るなら、配偶者居住権を『遺贈する』旨、対象となる建物、権利を取得する配偶者、存続期間を明確にします。建物は、通称の住所だけでなく、登記事項証明書に沿って特定します。

一方、建物と土地の所有権を誰に承継させるのかも決めます。『妻に居住権を残す』だけでは、所有権について別途協議が必要になることがあります。居住権と所有権を、別の欄に書き出してみると整理しやすくなります。

すでにある遺言に『配偶者居住権を相続させる』と書かれていても、その一語だけで無効と決めつけるべきではありません。法務省の登記上の取扱いでは、遺言全体から遺贈の趣旨が明らかな場合を認めています。既存の遺言は全文を確認し、新しく作る際は解釈に迷わせない表現を選びます。[1・3]

遺言執行者を指定しておくことも、実行段階の役割を明確にする方法です。ただし、執行者を置けば名義や登記の問題がすべて解消するわけではありません。原案の段階で、公証人や登記を担当する司法書士との確認事項を整理しておきます。

終身か、期間を区切るか。更新を前提にしない

民法上、存続期間は原則として配偶者の終身です。遺言等で別の期間を定めることもできますが、定めた期間を後から延長・更新することはできないとされ、延長・更新の登記も認められません。[1・3]

例えば『10年間あれば十分だろう』と決めても、10年後の健康状態や家賃相場は分かりません。期間の設定は、数字の収まりのよさではなく、その後どこに住み、誰が費用を負担するかまで含めて考える必要があります。

反対に、終身なら将来の住み替えまで自動的に解決するわけでもありません。施設に入る場合の資金、空いた家の管理、所有者と売却を相談する手順を、家族の検討事項として残しておきましょう。

配偶者に残すのは、居住権だけで足りるか

家賃がかからなくても、食費、医療費、固定資産税の負担、修繕などの支出は続きます。住まいを確保した結果、配偶者が受け取る預貯金が足りなくなるなら、設計を見直す必要があります。

例えば、生活費の不足が毎月5万円なら年間60万円です。ここに家の維持費や臨時の修繕費が加わります。これは説明用の仮定ですが、『家があるから大丈夫』という感覚を、実際の収支へ置き換える意味があります。

配偶者居住権には財産的価値があるため、遺産の分け方にも影響します。ただし、婚姻期間20年以上の夫婦間での配偶者居住権の遺贈には、持戻し免除の意思表示を推定する規定があります。これは、遺産分割の計算上、原則としてその遺贈を別枠に扱う方向の規定です。相続税が非課税になる規定でも、ほかの相続人の遺留分がなくなる規定でもありません。[1]

配偶者に建物の所有権を渡す案とも比較してください。本人が将来、自分の判断で家を売って住み替えたいなら、所有権を取得する方が希望に合うこともあります。制度を使うこと自体を目的にしない視点が大切です。

相談前に、家族でこの5点を整理する

①建物と土地の名義・共有者・担保、②配偶者の居住実態、③所有権の承継先、④生活費と修繕の予備費、⑤施設入所や売却を考える場合の希望。この5点を、分かる範囲で書き出します。

配偶者の意思も直接確認したいところです。『ずっとこの家にいたい』のか、『当面は住みたいが、介護が必要なら移りたい』のかで、適した設計は変わります。

家族へのお願いを遺言の付言事項に書くことには意味があります。しかし、それだけで費用負担などの具体的な義務が当然に生まれるわけではありません。法的な効力を持たせたい事項と、気持ちとして伝える事項を分けて整えましょう。

遺言を作った後も、自宅の売却、建替え、共有者の変更、配偶者の生活状況の変化があれば見直します。配偶者が先に亡くなった場合の財産の行き先も決めておくと、別の相続手続きで迷いにくくなります。

ご家族の状況に合わせて、準備を整理したい方へ

はまなす行政書士事務所では、遺言原案の作成、相続人・財産の調査、合意した内容の書類作成などをご相談いただけます。登記は司法書士、税務は税理士、紛争の解決は弁護士の担当となるため、必要な手続きと相談先を整理します。

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確認した法令・公的資料

本文の番号は下記資料に対応します。法律上の要件と、家族で協議するための実務上の提案を区別して記載しています。具体的な適用は、権利関係・遺言・合意内容等により異なります。

1.民法(第1028条〜第1041条ほか)

2.法務省・配偶者居住権等のQ&A

3.法務省・配偶者居住権の登記の取扱い

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