はまなす行政書士事務所 | 2026年10月15日公開
退職する児童発達支援管理責任者から、後任へファイルを渡した。計画書も記録も入っている。それでも翌週、「この家庭には、もう説明しましたか」という確認が続く。引継ぎで不足しやすいのは、資料の量より、一人ひとりの支援が今どこまで進んでいるかという情報です。
この記事の要点
引継ぎは、資料の保管場所と、次の行動をセットにします。子どもごとに「現在の計画・未完了の作業・担当・期限」を確認し、配置や届出の手続きは別の一覧で管理します。
最初の一歩: 今月と翌月に確認・面談・交付の予定がある子どもから、一人分だけ「次にすること」を書き出してください。
この記事の目次
こんな場面から考えます
以下は説明用の例です。計画書には新しい目標が書かれていましたが、保護者との面談は翌週の予定でした。後任が完成済みだと思えば、面談は抜け落ちます。「原案は作成済み、説明は未実施、面談は水曜」という一行があれば、ファイルを開く前に次の仕事が見えます。
1.「作成済み」を、一つの状態として使わない
計画の原案ができたこと、会議で検討したこと、保護者等への説明と同意、交付、支援への反映。これらは別の段階です。ガイドラインでも、アセスメントから計画作成・実施・評価・見直しへつなぐ流れが示されています。[1] 引継ぎでは、どの段階まで実際に終わったかを記録します。
「全部済み」とまとめず、日付と確認できる資料を添えます。日付が見つからない場合は、推測で埋めるのではなく「要確認」とする。引継ぎ表をきれいに完成させることより、未確認を次の担当へ確実に渡すことが大切です。
2.一人一行の一覧で、次の行動を見えるようにする
全員分の詳細な経過を一覧表へ転記する必要はありません。必要な資料にたどり着く索引と、未完了の作業をまとめます。氏名等の個人情報を扱うため、閲覧権限を決めた保管先を使い、私物端末や個人の連絡アプリへ不用意に移しません。
次の例は法定様式ではなく、内部の進捗管理のための例です。実際の説明・同意・交付等の記録に代わるものではありません。元の資料と照合できるように使います。
| 確認する欄 | 記入例 | 引継ぎ後の行動 |
|---|---|---|
| 現行計画と保管先 | 4月版・共有フォルダ内の指定場所 | 現場が参照する版を確認 |
| 進行中の作業 | 10月改訂の原案作成済み、説明未実施 | 面談日と説明担当を確定 |
| 家庭との約束 | 次回、送迎時の困りごとを確認 | 約束した質問を面談へ引き継ぐ |
| 次の期限・担当 | ○月○日、後任が確認 | 担当者が予定表へ登録 |
| 未確認事項 | 交付日を示す記録が見つからない | 原資料・関係者へ確認する |
3.支援の「できる条件」を、後任が使える言葉にする
「切替えが苦手」「保護者対応に注意」といった短い評価だけでは、後任は何をすればよいか分かりません。「活動を終える3分前に写真で次の予定を伝えると、移動に取りかかりやすかった」のように、場面・働きかけ・反応を分けて残します。
同時に、いつも同じ方法でよいと固定しないことも必要です。本人の意思やその日の状態、環境で反応は変わります。うまくいった条件を手掛かりとして渡し、本人の反応を確かめながら続けられる形にします。これは後任の裁量を奪うための手順書ではなく、支援の再出発を助ける情報です。
4.保護者への説明は、交代日と連絡先だけで終わらせない
担当が替わると、「これまで話したことを、また一から説明するのか」と不安になる家庭もあります。交代日、新しい担当、継続する支援、今後確認したいことを整理し、約束した面談や連絡が抜けないようにします。
本人や保護者の前で前任者の評価を語る必要はありません。「これまで伺った内容を引き継ぎ、次回はこの点を一緒に確認したい」と、支援の継続を具体的に伝えます。連絡先や対応時間に変更がある場合は、それも合わせて案内します。
5.配置要件・届出・報酬は、引継ぎ表と別に確かめる
仕事を渡せたことと、児童発達支援管理責任者として必要な配置が整ったことは別です。後任者の要件、研修の修了状況、勤務開始日、兼務の状況等を確認し、指定権者への変更手続きにつなげます。大阪市では変更事項別の必要書類が案内されています。[2]
欠員の扱い、やむを得ない事情による取扱い、報酬への影響は、後任の予定があるという理由だけで自己判断しません。実際の勤務状況と日付を整理して指定権者へ確認してください。記録の担当を変更するだけでは、配置上の問題は解消しません。
6.引継ぎ後の一回目の確認まで、予定に入れる
引継ぎ当日に質問が出なくても、実際に担当してから分からないことが見つかります。管理者と後任で、未完了事項が進んだかを確認する日を決めます。前任者が退職後も無期限に答えることを前提にせず、組織として確認できる資料と相談先を整えます。
例えば、交代後の最初の週に、面談予定・交付待ち・連絡待ちだけを点検する。新しい大きな会議を増やすより、まず残った仕事が動いているかを確かめます。引継ぎの完了は、ファイルを渡した瞬間ではなく、次の支援が始められる状態になったかで考えます。
よくある質問
前任者が急に不在になり、引継ぎができません。
管理者が原資料、予定表、職員の記録を照合し、確認済みと不明な事項を分けます。不明な日付を埋めず、支援の安全や直近の期限に関わる事項から確かめます。配置・届出については指定権者への確認を並行します。
後任になったら、すべての計画を書き直す必要がありますか。
担当交代だけを理由に機械的に作り直すのではなく、現行計画の内容、本人・家庭の状況、見直し時期、未完了の手続きを確認します。必要な見直しと手順は、基準や指定権者の取扱いに沿って判断します。
次にすること
- 現行版の計画と保存場所を確認する
- 説明・同意・交付の実施状況を分ける
- 家庭への返答待ちと次の面談を引き継ぐ
- 配置・変更届・報酬の確認担当を決める
- 交代後に未完了事項を確認する日を設ける
参照資料と編集について
[1] こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」第4章・第6章 →
制度情報の確認日:2026年10月15日。具体例・引継ぎ表は当事務所による実務上の提案です。個人情報を含む資料の取扱いは、事業所の規程と適切なアクセス管理に沿って行ってください。

