まず押さえたいこと

2025年10月1日から、法務大臣が指定する公証人による公正証書の作成は原則として電磁的記録による方式へ移行しました。ウェブ会議の利用は希望すれば必ず認められるものではなく、公証人が相当と認めること等が必要です。遺言者の真意や判断能力の確認は引き続き重要です。[1][2]

最初の一歩:希望する公証役場へ、遺言の作成希望、来所が難しい事情、機材を扱える状況を具体的に伝えます。

2026年改正と施行時期について

公正証書の2025年からのデジタル化と、2026年6月公布の改正法による「保管証書遺言」は別の制度です。後者の創設等は公布から3年以内の政令で定める日に施行される仕組みです。本記事のリモート案内を、法務局へ電子データの遺言を自由に送ればよいという意味に読み替えないでください。[5]

この記事の目次

1.電子データの原本と、リモート作成は別の話

説明用の例です。足の不自由な父のため、娘が「公正証書は電子化されたから、家のスマホで全部できる」と考えました。しかし、原本を電子データで作ることと、ウェブ会議で参加できることは同じではありません。公証役場へ出向いて、電子的な方法で作成する場面もあります。

日本公証人連合会の案内では、公正証書の原本は原則としてPDF形式の電磁的記録で作成され、列席者が電子サイン等を行う方式が示されています。自宅で作ったPDFに電子署名を付ければ公正証書遺言になる、という意味ではありません。[1]

2.リモート利用は、公証人の判断を受ける

リモート方式には、嘱託人の申出があること、所定の場合に他の嘱託人の異議がないこと、公証人が相当と認めること等の要件があります。遺言や任意後見など、本人の意思確認が特に重要なものでは、慎重に判断されます。[2]

心身の状況や地理的事情等により来所が困難であることは必要性の判断材料となりますが、それだけで許可が約束されるわけではありません。本人確認、真意、判断能力、機材操作等を含めて検討され、事前に利用可能と考えられていても当日の事情で取り止めとなる場合があります。

3.機材は、予約を入れる前に確認する

公式案内では、ウェブ会議と電子サインに対応するパソコン、カメラ・マイク・スピーカー、タッチ入力機器やペンタブレット等、メールの送受信環境が必要とされています。スマートフォンやタブレット型PCでは対応できないとの案内があるため、手持ちの端末だけで足りると決めないでください。[1]

確認項目公証役場へ伝える内容
参加する人遺言者・証人・通訳等の予定
来所が難しい理由移動、健康、距離、施設の事情等
本人確認求められる証明書と提出方法
機材・操作端末、入力機器、メール、操作の可否
参加環境音声・映像、落ち着いて意思確認できる場所
受取り書面・電子データ等の希望

利用可能なOSやブラウザ等は更新されるため、古い一覧だけで機材を購入せず、予約先の現行案内を確認します。家族が操作を支援する場合も、本人の意思確認を妨げない方法を公証役場と相談してください。

4.証人と遺言の準備は、省略されない

デジタル化しても、公正証書遺言に必要な証人や、受取人・財産の特定、本人の意思確認が不要になるわけではありません。誰へ何を残すか、遺留分への配慮、執行者、財産の増減などを事前に整理します。[3][4]

証人の候補者には資格制限があるため、受取人となる子やその配偶者をそのまま証人として予定しないでください。公証役場の紹介を希望する場合は、人数・日程・費用を確認します。手数料も制度変更に伴い見直されているため、従来の概算をそのまま使わず見積りを求めます。

5.紙で受け取ることと、原本の形式を区別する

公式案内では、電磁的記録を出力した書面、インターネット経由、対応する記録媒体等の受取方法が示されています。家族が電子データを扱えないなら、相続開始後の利用まで見通して受取り方を相談します。[1]

紙で保管しているから旧制度の遺言、電子データだから銀行でそのまま使える、と単純には判断しません。公証役場から交付されたものの種類・利用方法を記録し、死亡後に家族が確認できる場所を伝えておきます。

よくある質問

デジタル方式なら、公証人に会わず本人の署名だけで作れますか。

公証人による作成・本人の意思確認等が必要です。自分でPDFを作ることと、公正証書遺言の作成は別です。

リモートが認められなければ、遺言は作れませんか。

来所のほか、公証人の出張等を検討できる場合があります。本人の状態、場所、日程、費用を伝え、利用可能な方法を相談してください。

今日の確認メモ

  • 原本の電子化とリモート利用を分ける
  • 本人の事情を公証役場へ伝える
  • 機材と本人確認を事前に確認する
  • 証人・費用・受取り方法まで予定を立てる

根拠となる公式資料

[1] 日本公証人連合会「公正証書」デジタル化・必要機材等のQ&A

[2] 日本公証人連合会「リモート方式の利用ができる場合」

[3] 日本公証人連合会「公正証書遺言の証人は、どのように手配するのですか?」

[4] 日本公証人連合会「遺言公正証書の作成に必要な資料」

[5] 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)」令和8年法律第45号・施行区分

制度確認日:2026年10月17日。日本の一般的な相続・遺言手続きを説明しています。事例・金額は説明用です。作成日・死亡日等による経過措置や個別の事情で結論は変わります。税務は税理士・税務署、登記は司法書士等、紛争・権利行使は弁護士にご確認ください。

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