まず押さえたいこと

権利証や登記識別情報をなくしても、それ自体で所有権が失われるわけではありません。通常の相続による所有権移転登記では、被相続人の権利証等の提供を要しないのが基本です。ただし、名義人と被相続人の同一性を示す補助資料として役立つ場合や、別の登記で必要となる場合があります。[4]

最初の一歩:「どの物件の、誰の、何という書類がないのか」を確認し、登記事項証明書・納税通知書・古い契約書を分けます。

この記事の目次

1.権利証、登記事項証明書、納税通知書は別物

説明用の例です。長男は、市役所から届く納税通知書を「家の権利証」と思って保管していました。相続の相談で必要書類を尋ねられ、初めて違いに気付きました。書類の呼び方が曖昧なままだと、探す範囲も、依頼先への説明も広がってしまいます。

書類主な役割紛失時の考え方
登記済証(通称・権利証)登記済みであることを示す旧来の書類通常、再発行はされない
登記識別情報通知書登記手続きの本人確認に用いる情報の通知紛失による再通知は認められない
登記事項証明書現在の登記記録を確認する証明書対象物件を特定して取得する
固定資産税の納税通知書税の通知・物件調査の手掛かり登記名義や権利証の代わりではない

法務局は、登記済証・登記識別情報の紛失の場合でも、必要な登記で別の本人確認方法を検討できると案内しています。紛失したという事実と、所有権がなくなることは分けて考えます。[1][2]

2.相続登記と、相続後の売却を分ける

亡くなった人から相続人へ通常の相続登記をする場面と、既に自分名義になった家を買主へ売る場面では、必要書類が異なります。相続登記に親の権利証が必須だと思い込み、戸籍収集や名義確認まで止めてしまう必要はありません。

一方、相続登記後に自分へ通知された登記識別情報をなくしたまま売却する場合には、別の本人確認手続きが問題となります。売買の決済直前に判明すると日程へ影響することがあるため、売却予定があれば早めに司法書士へ伝えます。[1]

3.親の登記住所が古いとき、古い書類が役立つ場合も

被相続人の死亡時の住所と、登記に記録された住所が違うことがあります。住民票の除票や戸籍の附票等でつながりを確認しますが、古い記録の事情で資料が足りないケースもあります。

その際、権利証や過去の証明書等が同一性を確認する手掛かりとなることがあります。「相続登記に原則不要」と「不要だから捨ててよい」は違います。残っている書類をまとめ、何で同一性を示せるかを個別に確認してください。

4.盗難や情報流出の疑いがあるなら、探すだけで終わらせない

単なる紛失か、印鑑や本人確認書類も含めた盗難かで対応が変わります。法務省は、盗まれた登記識別情報の不正利用を防ぐため、登記名義人や相続人等による失効の申出を案内しています。[2]

失効するとその情報は利用できなくなるため、申出の対象と影響は法務局へ確認してください。旧来の登記済証の紛失と登記識別情報の失効を、同じ手続きと考えないことも必要です。不正登記の具体的なおそれがあれば、管轄法務局や司法書士等へ速やかに相談します。

5.家族で共有するのは、秘密の番号ではなく保管場所

相続後の登記識別情報は、手続きで重要な役割を持つ情報です。家族グループへ全面を撮影して送るなど、気軽な共有は避けます。保管者・保管場所・対象不動産を記録し、必要なときの受渡し方法を決めます。

「戸籍がない」「権利証がない」「土地の地番が分からない」は別の不足です。相談時には、ある資料とない資料を分類して伝えてください。書類探しのためだけに、相続登記の期限を過ぎないようにします。[3]

よくある質問

権利証を再発行してもらってから相談すべきですか。

通常、紛失した権利証等の再発行を待つという進め方にはなりません。今ある資料と紛失の状況を持って、必要な手続きを確認します。

登記事項証明書を取れば、失った権利証の代わりになりますか。

両者は役割が異なり、単純な代用品ではありません。証明書で登記の状態を確認した上で、その登記申請に必要な本人確認等を検討します。

今日の確認メモ

  • 書類の正式名称と名義人を確認する
  • 相続登記か売却登記かを分ける
  • 古い住所をつなぐ資料を探す
  • 盗難の疑いと期限を相談時に伝える

根拠となる公式資料

[1] 名古屋法務局「よくあるお問合せ」登記済証・登記識別情報の紛失

[2] 法務省「新不動産登記法Q&A」

[3] 法務省「相続登記の申請義務化について」

[4] 法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ」登記手続ハンドブック

制度確認日:2026年10月17日。日本の一般的な相続・遺言手続きを説明しています。事例・金額は説明用です。作成日・死亡日等による経過措置や個別の事情で結論は変わります。税務は税理士・税務署、登記は司法書士等、紛争・権利行使は弁護士にご確認ください。

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