職員を守る対応と、サービスの不備を調べる対応。どちらも進めるには、現場の一人に全部を任せない仕組みが必要です。
口論は収まった。でも、予約の問題は残った
たとえば、予約と違うサービスが提供されたとします。客が説明を求めても話がかみ合わず、声が強くなり、やがて暴言が出た。これは説明のための架空の場面ですが、対応の難しさは想像できるでしょう。
職員を守るため、暴言は止める必要があります。では、最初にあった予約の食い違いは、誰が調べるのでしょうか。口論が終わっても、予約が正しく処理されたかという問題は残ります。
消費者庁が2026年10月1日に公開したカスタマーハラスメント防止の啓発資料では、客の言葉や態度に加え、不満が生まれる背景や従業員の対応も扱っています。[1]
正しい申し出でも、暴言は許されない
厚生労働省の説明では、事業者や職員の不適切な対応が背景にある場合も、判断で考慮するとされています。一方、要求が正当でも、実現しようとする方法が社会通念上許容される範囲を超えれば、カスハラに当たり得ます。[2]
店の対応に問題があったとしても、職員を脅したり侮辱したりする理由にはなりません。ただ、客が暴言を言ったことで、店の対応に問題がなかったことにもなりません。
予約にミスがあったかを調べる仕事と、職員への攻撃を止める仕事は、別々にできます。この二つを分けると、「調査するために職員が我慢する」「職員を守るために苦情を打ち切る」という行き詰まりを避けやすくなります。
最初に、危険な言動から職員を離し、必要に応じて責任者へ交代する。その後、予約記録や説明内容を調べる。安全の確保を先にしても、元の問題を調べることはできます。
記録を残すことと、ネットで公開すること
後から説明が食い違うと、どちらが何を言ったかを確かめにくくなります。録音、映像、対応メモは、その確認を助けます。
ただし、証拠のためなら、どこでも無制限に撮影してよいわけではありません。撮影の場所、目的、必要性、方法、範囲などで判断が変わります。[3] 会話の内容を残したいだけなら、顔の映像まで必要かも考えます。ほかの客や個人情報が入らない配慮も大切です。
記録を手元に保存することと、SNSへ公開することも分けます。事実を確かめるために残す必要があっても、広く人に見せる必要まで同じように認められるとは限りません。
会社が記録する場合は、日時、申し出、説明した内容、言動の変化を残します。録音や映像は、前後のやり取りがわかる形で保ち、見る人と保存期間を決めます。一場面だけの切り抜きでは、かえって誤解を生むことがあります。
会社の説明を、窓口の一人に背負わせない
会社のルールを変えてほしいという不満を、変更する権限のない職員が受け続けることがあります。客は話が進まないと感じ、職員はできない説明を繰り返す。双方が行き詰まる原因は、この役割の食い違いにもあります。
どの申し出を現場で答え、どの問題を責任者や別担当へ渡すのかを決める。元の苦情を調べる担当者と回答の見通しを、客に伝える。これだけでも、窓口の一人がすべてを抱える状況を減らせます。
調査の後には、何がわかり、何を直すのかを返します。問題が確認できなかったなら、その理由を説明します。回答が届かないままでは、客が同じ申し出を現場へ繰り返すことになりかねません。
職員を傷つける言動は止める。そのうえで、サービスの問題は調べて直す。この二つを会社の仕事として担えるようにすることが、職員と客の双方を守るカスハラ対応ではないかと思います。
資料確認日:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士


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