免許証の画像が届いた。それでも、取引相手が本人とは限らない

身分証を見ると、確認できた気になります。けれど、書類が本物か、送った人が本人か、約束が守られるかは、それぞれ別の問題です。

安心した理由が、確認になっていなかった

ライブのチケットを譲るという相手から、運転免許証の画像が届く。名前も顔写真もある。「ここまで見せるなら大丈夫だろう」と感じるのは、不自然ではありません。

国民生活センターが2026年10月6日に公表した相談事例では、相手から免許証画像を送られて信用し、送金した後に連絡が取れなくなっています。[1]

この人は、何も確かめようとしなかったわけではありません。身分証を見たことで安心したのです。問題は、その画像から何がわかり、何がわからなかったかにあります。

本物の免許証でも、送った人は別人かもしれない

免許証画像に名前があっても、送信した人がその名前の本人とは限りません。別の人の画像を持っている場合も、画像を加工している場合も考えられます。

本物の免許証が写っていることと、その持ち主が今やり取りしていることは違います。画像が偽造されていないかを確かめるだけでは、取引相手が本人かという問題が残ります。

さらに、相手が本人でも、チケットを持っているか、渡す約束を守るか、その券で入場できるかまではわかりません。身元がわかることと、取引が安全であることを、一緒にしないようにしたいところです。

チケットなら、公式の販売・リセール経路を使うことが基本です。個人から受け取った画像だけに頼らず、券の扱い、決済、受渡しの方法が定まった仕組みを選びます。国民生活センターも、正規販売ルートや公式リセールの利用を案内しています。[1]

金融機関の本人確認は、画像を受け取るだけでは終わらない

銀行などのオンライン本人確認でも、身分証の画像を使うことがあります。それを見て、「SNSで画像を送ってもらう方法と同じでは」と感じる人もいるかもしれません。

金融庁の説明では、本人確認の方法ごとに条件や手順が定められています。[2] 単に画像を受け取ることと、定められた方法で本人確認をすることは違います。

ここでは、個々の技術の仕組みより、確認の目的を押さえたいと思います。「書類が本物か」と「その本人が今、手続きしているか」は別です。身分証の画像を見ることに意味はあっても、その一枚で両方が確かめられたとは限りません。

押印をなくした書類も、確認の目的は残る

行政手続きでは押印が見直され、記名だけで提出できる書類も増えました。手間が減った一方、「誰が作って提出したかは、どう確認するのか」と気になる人もいるでしょう。

ここでも、三つに分けるとわかりやすくなります。提出した人が誰か。その人が提出を望んでいるか。書かれた内容が事実か。この三つは、同じ確認ではありません。本人が出した書類にも、内容の誤りはあり得ます。

認印が押してあれば、すべて証明されるわけでもありません。政府の押印Q&Aは、押印の証拠上の効果と、作成経緯の記録や電子署名などの代替手段を整理しています。[3]

大切なのは、印鑑を残すかなくすかだけで判断しないことです。手続きを簡単にするなら、作成者、提出の意思、内容の根拠を、必要に応じてほかの方法で確かめられるようにします。

多額のお金を送る手続きと、案内資料を取り寄せる申込みでは、誤った確認が招く被害の大きさも違います。すべてに同じ重い手続きを求めるのではなく、被害の大きさに合わせた確認が必要でしょう。

免許証の画像も、印鑑も、確認欄のチェックも、確認のための材料です。材料を集めたことだけで安心せず、「これで何がわかったのか」を説明できるようにする。その姿勢が、便利さを保ちながら信頼を守ることにつながると思います。

資料確認日:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士

← 時事ブログの記事一覧へ

コメントを残す