リースバックで自宅を売る前に。「住み続けられる」は、いつまで続く?

家を売っても、引っ越さなくてよい。その安心に、何年分の家賃と、どんな条件が付いているのかを確かめます。

住所は変わらなくても、支払いは変わる

住み慣れた家を離れたくない。でも、まとまったお金が必要になった。「家を売っても、そのまま住めます」と言われたら、安心する人は多いでしょう。引っ越しも、近所付き合いを変える必要もありません。

この仕組みがリースバックです。自宅を売り、売却代金を受け取った後、買主からその家を借りて、家賃を払います。本人の事情と条件が合えば、役に立つ選択肢です。

ただ、同じ家で暮らすため、契約による変化が見えにくい面があります。売る前は自分の家ですが、売った後は借りている家です。家賃の支払いと、住み続けるための契約条件が、新たに暮らしを左右します。

国民生活センターは2026年10月1日、長時間の勧誘を受けて契約した80歳代の人が、解約費用をめぐって困った相談事例を公表しました。売却価格、今後の家賃、退去した場合の住まいを検討するよう呼びかけています。[1]

「再契約の予定」と「必ず住める」は違う

最初に確かめたいのは、借りる契約の期間と、期間が終わった後の扱いです。

国土交通省のガイドブックによると、定期借家契約では、決めた期間が満了すると契約が終了します。その後も住むための再契約には、貸主と借主の合意が必要です。[2]

「期間が来たら再契約する予定です」と説明されても、将来の再契約が確実に約束されているかは、契約書を見なければわかりません。事業者が家を別の人へ売り、貸主が変わる可能性もあります。同じ家に住むつもりなら、何年先まで、どんな条件で住めるかを確認する必要があります。[2]

受け取る金額だけで、損得を決めない

次に、売却代金と家賃を一緒に見ます。たとえば、月8万円の家賃は、単純計算で10年間に960万円です。月額だけを聞いたときより、負担を想像しやすくなります。

もちろん、この数字だけで損とはいえません。売却によって固定資産税などの負担が変わることもあります。売却価格、手数料、家賃以外の費用、別の住まいに移った場合の支出まで比べる必要があります。

通常売却より価格が低いから不当、とも一概にはいえません。売主が住み続ける条件では、買主が自由に家を使えるわけではないからです。それでも、なぜその売却額と家賃になるのか、通常売却の査定も見ながら説明を聞くことは大切です。

売却額、毎月の支出、5年・10年の支出、契約終了後の住まい。この四つを並べれば、目の前の資金不足を解決することで、将来どんな負担を引き受けるのかが見えてきます。

説明を聞いた人が、本当に選べるようにする

事業者が適切な利益を得ることは必要です。気になるのは、本人がほかの方法と比べにくいまま、契約を決めてしまうことです。

住宅を売る経験は、多くの人にとって何度もあるものではありません。詳しい事業者との知識の差に、資金への焦りが加われば、説明を聞いても十分に考えられない場合があります。これは高齢者だけの問題ではありません。

条件を読み上げ、本人がうなずいた。それだけで、長い期間の負担まで理解したとは判断しにくいでしょう。説明した側の記録と、選ぶ側の理解は、別々に確かめる必要があります。

私なら、通常売却と転居などの選択肢も並べ、事業者と利害の異なる相談先に資料を見てもらう機会を設けたいと思います。本人が「なぜこの方法が自分に合うのか」を、自分の言葉で話せるかも大切です。

自宅を不動産業者へ売却する契約では、クーリング・オフはできません。後から解約しようとして費用の問題になることもあります。[1] だからこそ、契約前に立ち止まる時間が必要です。

「家に残れる」という安心を、長く続く安心にするために。受け取るお金だけでなく、払うお金と住める条件まで、同じ紙の上で比べてから決めたいものです。

資料確認日:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士

← 時事ブログの記事一覧へ

コメントを残す