そのメガネで撮っていませんか? 無断撮影のルールを整理する

普通の服装でも、公共の場所でも、何でも撮ってよいわけではありません。撮影する場所、目的、方法と、撮った後の使い方から考えます。

メガネ越しに、会話が残されていたら

店員と話す。子どもの相談をする。友人と食事をする。目の前の人がメガネをかけていても、普段は気にしません。そのメガネにカメラやマイクがあり、やり取りを記録していたら、どうでしょうか。

スマートグラスは、機種によって撮影や録音などができるメガネ型の機器です。作業を記録したり、情報を見たりする便利さがある一方、周囲の人が記録に気づきにくい問題があります。

ノルウェー政府は2026年10月5日、AI眼鏡について、一部の公共の場所などで使用を一時的に禁止する法案を提出する方針を発表しました。公園や学校、医療施設などが候補です。対象の技術や例外は今後検討されるため、すでに全面禁止されたという話ではありません。[1]

こっそり撮ることは、すべて犯罪なのか

日本で日常的に使う「盗撮」という言葉と、法律や条例で処罰される行為は、完全には同じではありません。

性的姿態撮影等処罰法は、性的な部位や、それを覆う下着、性的な行為中の姿などを、一定の方法や状況で撮影する行為を対象にしています。普通に服を着て歩く人の姿を、無断で撮ったというだけで、直ちにこの法律の犯罪になるわけではありません。地域の条例などの確認も必要です。[2]

ただし、この犯罪にならなくても、無断撮影が法的な問題になることはあります。最高裁は、人がみだりに顔や姿を撮影されない利益を認めています。撮影された人の活動、場所、目的、方法、必要性などを合わせて考え、社会生活で我慢しなければならない範囲を超えた撮影かを判断します。違法とされれば、損害賠償などの問題になります。[3]

刑事罰の対象か、民事上の責任があるか、施設のルールに反するか。この三つを分けると、撮影の線引きを考えやすくなります。

風景への映り込みと、人を追い続ける撮影

観光地の風景に通行人が一時的に入る場合と、特定の人を追い、顔を撮り続ける場合では、撮られる人への影響が違います。

街路と診察室でも事情が変わります。診察室では、映像や会話から健康に関する情報がわかることがあります。相談室なら、家族の事情が残るかもしれません。更衣室や浴室では、性的な姿の撮影も問題になります。

撮る前には、場所、記録する内容、目的、時間や範囲を確かめる必要があります。施設の規則や管理者の指示も確認します。「外から見える場所だから大丈夫」と、それだけで判断しないことが大切です。

撮影と公開も分けて考えます。手元の映像をSNSへ載せれば、顔や会話を、不特定多数の人が見られるようになります。撮影時と公開時では、本人への影響が違います。

撮られる人が、断れるようになっているか

道を歩けば、人の目に入ります。しかし、その日の行動が映像に残り、後から繰り返し見られたり、人に渡されたりすることまで、同意したとは限りません。

スマートグラスで特に気になるのは、本人が撮影に気づけなければ、断ることもできない点です。「嫌なら言ってください」と伝えても、撮っていることを知らない人には役立ちません。

相談室や福祉施設などで利用するなら、撮影・録音していることを相手に伝え、記録してよい場所と目的を決めておく必要があります。本人が断った場合には、撮影せずに相談やサービスを受けられる方法も用意したいところです。「断ってよい」と言うだけでなく、断った後も困らないようにすることが大切です。

撮影する人にとっては便利でも、撮られる人が落ち着いて話せなくなるなら、その場所の役割が損なわれます。撮影機能をどう使うかと一緒に、安心して撮影を断れる場をどう守るかも考えたいと思います。

資料確認日:2026年10月7日|はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士

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