101. NPO法人が理事から借りる・借り入れるとき――利益相反と契約する人を確認する

円卓と別々の契約資料で透明な法人運営を表したイメージ

はまなす行政書士事務所

この分野の専門記事一覧へ

101. NPO法人が理事から借りる・借り入れるとき――利益相反と契約する人を確認する

円卓に別々の契約資料を置き、公正な意思決定と透明な法人運営を表した会議室のイメージ

専門記事・実務研究|資料確認日:2026年10月2日

理事が法人に建物を貸す、資金を貸す、業務を提供する。運営上必要な取引でも、法人と理事の利害が向き合う契約では、金額の妥当性だけでなく誰が法人を代表するかを確認する必要があります。契約前に定款と資料をどう読むかを整理します。

この記事の要点

取引条件の妥当性と、法人を代表して契約する権限を別々に点検します。定款、決議、所轄庁の手続、会計の記録を契約の条件に結び付けます。

目次
1. 取引が必要なことと、代表権があることは別
2. 定款と登記事項から、誰が代表できるかを調べる
3. 特別代理人の検討を、契約署名の前に行う
4. 条件の妥当性は、比較資料と目的から説明する
5. 決議と契約書と会計を、同じ条件にそろえる
6. 契約前の点検メモを、案件ごとに残す
7. 運営支援と紛争対応を分けて相談する
確認表|よくある疑問

取引が必要なことと、代表権があることは別

例えば、理事長所有の建物を法人が事業所として借りる場合、法人には適切な条件で借りたい利益があり、貸主には家賃を得たい利益があります。「法人のための取引だから問題ない」と考えるだけでは、代表権や手続の確認を済ませたことになりません。

取引の相手方が理事本人なのか、その理事が関与する別法人なのか、親族なのかを明らかにします。法人の種類や当事者の立場が変われば確認事項も変わるため、NPO法人、株式会社、一般社団法人の手続を同じものとして扱わないようにします。

定款と登記事項から、誰が代表できるかを調べる

NPO法第17条の4は、法人と理事との利益が相反する事項について、その理事は代表権を有しないと定めています。内閣府Q&Aは、他に代表権を有する理事がいる場合や、定款の職務代行規定がある場合等の考え方を示しています。[1][2]

理事長以外なら誰でも署名できる、と決めないでください。定款の代表権の制限、職務代行規定、登記事項、契約する人自身の利害関係を照合します。副理事長という肩書だけで、特別代理人が必ず不要になるわけではありません。

特別代理人の検討を、契約署名の前に行う

当該取引を有効に代表できる人がいない場合などは、所轄庁による特別代理人の選任を検討する必要があります。具体的な取扱いは定款と取引内容を示して所轄庁に確認します。役員間の話合いで候補者を決めることと、所轄庁の選任を受けることを区別します。[1]

想定例として、代表権が理事長のみにあり、理事長個人が貸主になる契約を考えます。契約書の貸主欄と借主側代表欄に同じ本人が署名する前に、利益相反と代表方法を確認します。既に契約している場合は、日付を変えて作り直すのでなく、現状の事実と必要な対応を専門家に相談します。

条件の妥当性は、比較資料と目的から説明する

家賃なら周辺相場、使用面積、修繕負担、契約期間などを、貸付なら元本、資金使途、利率、返済条件、担保等を整理します。本人の希望額だけでなく、法人がその条件を選ぶ理由を残します。比較できる資料がない場合は、何を根拠に判断したのかを明確にします。

第三者から見て説明できる条件でも、代表方法の問題がなくなるわけではありません。逆に、代表方法を適切に整えても、法人に不合理な条件が正当化されるわけではありません。権限、決議、取引条件、会計処理をそれぞれ点検します。

決議と契約書と会計を、同じ条件にそろえる

定款等で必要な決議機関、利害関係者の議決参加の扱い、契約する人を確認します。議事録には、議題、対象取引、説明資料、判断内容、参加・不参加の状況を、実際の会議に即して残します。全員が知っているから記録不要とは扱いません。

貸付の想定例では、議事録上の額と実際の入金、借用書の返済条件、会計の借入残高を照合します。貸付金と業務報酬や立替金を同じ残高に混ぜず、何に基づく債務なのかを説明できる資料にします。会計・税務の判断は専門家の確認とつなげます。

契約前の点検メモを、案件ごとに残す

点検項目は、当事者と利害関係、法人の目的との関係、定款の該当条項、代表権の確認資料、必要な決議、所轄庁確認の有無、比較条件、契約案、会計担当への引継ぎです。未確認事項が残っている状態で署名日だけを先に決めないようにします。

記録例:貸主は理事長個人、家賃比較資料2件を取得、代表方法は定款の代行規定と所轄庁の取扱いを確認中、契約案は未締結。このように、決定事項と確認中の事項を一目で区別できるメモが役立ちます。

運営支援と紛争対応を分けて相談する

当事務所では、定款・議事録・契約案等の整理、所轄庁手続の確認、運営書類の整備を支援します。具体的な代表方法や必要書類は、法人の実際の規定と案件内容に基づき確認します。

契約の有効性や返済を巡って既に対立している場合、役員の責任追及や債権回収が問題となる場合は弁護士に相談してください。この記事の想定例は一般的な説明であり、特定法人や役員の違法性を指摘するものではありません。

相談前に使える確認表

次の表は、事実と未確認事項を分けるための実務上の整理例です。法定の様式ではありません。

項目確認すること手掛かりとなる資料
当事者法人と誰の利益が向き合うか役員情報・相手方の関係
権限誰がこの契約を代表できるか定款・登記事項・利害関係
決定どの機関で誰が決めるか定款・議事録
条件法人がその条件を選ぶ理由は何か比較資料・見積・契約案
実行契約と入出金が一致するか契約書・通帳・会計記録

よくある疑問

理事会で全員が賛成すれば、理事長が両側に署名できますか。

決議と代表権は別の問題です。利益相反の取引では当該理事の代表権を確認し、定款と所轄庁の取扱いに沿って適切な契約主体を整えます。[1][2]

副理事長がいるなら、特別代理人は不要ですか。

肩書だけでは決まりません。代表権の制限、代行規定、本人の利害関係を確認します。代表権を明確に証する手続が求められる場合もあるため、契約前に確認してください。[1]

参考資料

[1] 内閣府NPOホームページ・役員等Q&A(2-3-9〜2-3-13)

[2] 特定非営利活動促進法・第17条の4(e-Gov)

制度上の説明と、記録・確認表等の実務上の提案は区別して記載しています。具体的な対応は最新法令・通知・自治体運用・個別事情を確認してください。想定例と生成画像は、実在の相談者・受任実績を示すものではありません。

あわせて読みたい記事

37. NPO法人の役員が全員再任でも手続は必要――任期・議事録・届出を取り違えない

83. NPO法人の理事会と総会、どちらで決める?――定款と法定事項から決議機関を確認する

39. 業務委託の「ここまで頼んだはず」を防ぐ――成果物・修正・追加料金を契約前に決める

事情を整理するところから、ご相談ください

現在の状況と、何を確認したいかを分かる範囲でお知らせください。行政書士として対応できる範囲を確認し、必要に応じて他の専門家への相談をご案内します。

この分野のご相談へ →

料金・相談について|記事一覧へ戻る