114. 遺言で渡す相手が先に亡くなったら――予備的な遺言で次の行先を決める

左に手書き用の紙と万年筆、右に整った書面と封筒のイメージイラスト

遺言・相続の実務ガイド / 内容確認:2026年10月4日

左に手書き用の紙と万年筆、右に整った書面と封筒のイメージイラスト

「自宅は妻に残す」と遺言を作っていたものの、妻が先に亡くなった。では、その自宅は妻の子が引き継ぐのでしょうか。遺言に書いた相手が受け取れないときは、家族の予想と法律上の扱いがずれることがあります。

遺言で指定した相手が先に亡くなったとき、その指定が当然に相手の子へ引き継がれるとは限りません。希望する次の受取人がいるなら、「誰が、どの場面で、何を受け取るか」を予備的な遺言として準備します。

「法定相続の代襲」と「遺言の受取人」は別の話

父が「自宅を長男に相続させる」と遺言を残し、父より先に長男が亡くなった例を考えます。長男には子が1人いて、父には次男もいるとします。

長男の子は、父の法定相続では代襲相続人になり得ます。しかし、父が長男に渡すと指定した自宅を、その指定どおり当然に取得するという意味ではありません。長男への指定が効力を持たず、その自宅について相続人間の協議が必要になる場面があります。

「孫が長男の代わりに相続人になる」と「自宅の取得者が孫に決まる」は違う、ということです。遺言全体の文言や事情による解釈の問題もあるため、すでに相続が始まっている場合は原本を確認して判断します。

予備的な遺言は、次の受取人を先に決めておく仕組み

長男が受け取れない場合は長男の子へ自宅を残したい。その希望を、最初の指定に加えて遺言に盛り込むのが予備的な遺言です。「万一の場合も家族なら分かるだろう」という部分を、法的に実行できる形へ整理します。

考え方を整理するメモなら、次のように書き分けられます。これは完成した遺言の文例ではなく、公証人等に希望を伝えるための準備です。

決める項目この例の希望
第一の受取人長男
対象財産特定した自宅の土地・建物
第一の受取人が先に死亡した場合長男の子へ
同時に死亡した場合同じく長男の子へ
長男の子も受け取れない場合次の希望を別途検討

受取人が複数なら、均等なのか、持分を変えるのかも決めます。不動産を複数人の共有にすると、その後の管理や売却に合意が必要になることがあります。「孫たちに公平に」という希望を、暮らしと管理のしやすさまで含めて考えましょう。

先に亡くなる場合と、受け取った後に亡くなる場合を区別する

妻へ自宅を残す遺言で、妻が夫より先に亡くなった場合は、夫の遺言の代わりの受取人をどうするかという問題です。

一方、夫が先に亡くなり、妻が自宅を取得した後に妻も亡くなった場合、その自宅は原則として妻の相続で扱われます。夫の遺言に「妻が先に亡くなった場合は長女へ」と予備的な指定があっても、妻が一度取得した後の相続まで当然に長女へ固定できるわけではありません。

例えば、再婚家庭で「まず妻の暮らしを守り、妻の死亡後は自分の子へ残したい」という希望は、単純な予備的な遺言だけでは実現しない可能性があります。希望する順序を伝え、信託等も含めた別の設計が必要かを確認します。

死亡以外の「受け取れない」を一緒くたにしない

受取人が先に亡くなること、遺贈を放棄すること、相続放棄をすることは同じではありません。「受け取れないときはすべて次の人へ」という曖昧な説明だけで、遺言の効果を決めないようにします。

公証人等との打合せでは、少なくとも「先に死亡した場合」「同時に死亡した場合」を分けて確認します。受取拒否なども想定するなら、それをどの条項で扱うか、具体的な希望を伝えます。

残った財産を一人に取得させる条項が別にある場合は、予備的な指定との優先関係も確認します。条項を足すたびに、別の条項との矛盾が生じていないかを読み直すことが大切です。

作成後は、受取人だけでなく財産と実行役も見直す

予備的な遺言があっても、指定した自宅を売却し、住み替えた後なら、元の自宅についての条項だけでは現在の希望を表しきれないことがあります。財産を特定する内容と、残余財産の扱いを合わせて確認します。

遺言執行者を指定する場合も、その人が先に亡くなる、引き受けられなくなる可能性があります。受取人の予備的な指定と、実行役の備えは別々に考えます。

  • 受取人や予備の受取人が亡くなったとき。
  • 婚姻・離婚・養子縁組などで家族関係が変わったとき。
  • 不動産の売却・住み替えなどで対象財産が変わったとき。
  • 受取人の暮らしや、遺言執行者の対応可能性が変わったとき。

こうした変化があったら、古い遺言をそのまま保管するだけでなく、今の希望との一致を点検してください。別紙メモに受取人を書き足すだけでは、法律上有効な変更になるとは限りません。

よくある疑問

予備の受取人を決めたら、その人に今すぐ知らせる必要がありますか?

遺言の作成について当然に全員の同意が必要ということではありません。ただし、実行に協力や負担を求める内容なら、対応できるかの確認が大切です。知らせる範囲は、家族関係や遺言の保管・発見の方法と合わせて考えます。

長男が亡くなった後なら、古い遺言を捨てればよいですか?

処分を急ぐより、遺言全体と現在の希望を確認し、有効な方法で新しい内容を整えることが先です。一部の指定が問題になっても、ほかの条項まで同じ扱いになるとは限りません。

「次は誰へ」を、財産ごとに考える

遺言を点検するときは、受取人の横に「この人が自分より先に亡くなったら?」と書き添えてみてください。自宅、預金、残りの財産で希望が違うなら、その違いも大事な情報です。予備的な遺言は、長い文章を加えることより、変化が起きても希望が途切れないようにするための準備です。

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根拠・確認先

本文の人物・金額を用いた例は、理解のための架空の例です。個別の判断は、遺言、家族関係、財産、契約内容等を確認して行います。

遺言の内容と準備を相談したい方へ

当事務所では、家族関係と財産を整理し、第一の受取人と万一の場合の希望を公正証書遺言等の準備につなげます。受取人が取得した後の行先まで希望がある場合は、その順序をお知らせください。法的な争いは弁護士、税務は税理士等と確認します。

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はまなす行政書士事務所 行政書士 角屋敦士