104. 「うちでは対応できません」の前に――合理的配慮を対話・代替案・記録につなげる

静かな相談室と視覚的な説明カードを配置した合理的配慮のイメージ

104. 「うちでは対応できません」の前に――合理的配慮を対話・代替案・記録につなげる

静かな相談室と視覚的な説明カードを配置した合理的配慮のイメージ
AI生成のイメージ画像。実際の事務所・施設・案件の写真ではありません。

資料確認日:2026年10月2日

電話で説明を聞くことが難しい。待合室の音で落ち着かない。書類の細かい文字が読めない。障害のある方からの相談で、担当者の善意だけに頼ると、応対が人によって変わります。合理的配慮を、希望を聞いて終わる対応から、本人と解決策を検討し実行する業務へつなげます。

この記事の要点

求められた方法だけを可否判定するのではなく、参加を妨げる事情と目的を確認し、実現できる代替案を対話で探します。難しい場合も具体的理由と次の提案を残します。

目次
1. 対象は福祉事業所だけではない
2. 聞き取るのは診断名より「何が妨げになっているか」
3. 希望された方法と、達成したい目的を分ける
4. 過重な負担を、印象で決めない
5. 想定例:電話でしか受け付けない相談窓口
6. 対話の記録は、対応した結果まで残す
7. 一人への対応を、サービスの改善にも生かす

1. 対象は福祉事業所だけではない

2024年4月1日から、障害者差別解消法に基づく事業者の合理的配慮の提供は義務となりました。家族や意思疎通を支える人からの意思表明も含め、負担が過重にならない範囲で社会的障壁を取り除く対応が求められます。[1]

ここでは利用者・顧客へのサービス提供を扱います。職員の雇用については障害者雇用促進法の枠組みがあるため、同じ受付簿で一括処理せず担当部署と制度を分けます。[2]

2. 聞き取るのは診断名より「何が妨げになっているか」

「どんな配慮が必要ですか」と聞くだけでは、本人も方法を思い付けない場合があります。電話、書面、待つ場所、時間、説明の順番など、困っている場面を具体化します。「電話だと聞き漏らすので、文章で確認したい」という目的が分かれば、対応候補を複数出せます。

診断名や家庭事情を必要以上に集めず、本人が使いやすい伝達方法を確認します。家族の希望と本人の意思が一致するとは限りません。本人への説明を省略せず、表現や理解を助ける方法を検討します。

3. 希望された方法と、達成したい目的を分ける

内閣府は、双方が事情を理解し解決策を検討する「建設的対話」を重視しています。[1] これを実務に落とすため、申出の方法、その方法が必要な理由、同じ目的に近づく他の方法を別欄にします。

例えば「いつでも個室を使いたい」という申出では、音を減らしたいのか、人目を避けたいのか、長時間待つことが難しいのかを確認します。静かな時間帯の予約、短い待機、筆談、別室の一時利用などを候補にし、本人と効果を確かめます。

4. 過重な負担を、印象で決めない

「全員に同じ対応だから」「前例がないから」という一言では、検討の過程が伝わりません。困難があるなら、場所、職員配置、業務への影響、費用、安全面など、問題となる条件を具体化します。これは本記事の管理提案であり、全国共通の判定点数表ではありません。

提供が難しい方法については、何が難しいかを説明し、できる範囲や試行期間を提案します。安全上の懸念も、障害名だけから推測せず、その場面で想定する危険と回避策を検討します。担当者一人の判断にせず、責任者が相談を受けられる経路を設けます。

5. 想定例:電話でしか受け付けない相談窓口

以下は想定例です。聞こえにくさがありメール相談を希望した方に、「予約は電話だけです」と回答すると、相談に進む入口が閉ざされます。予約に必要な項目を文章で案内し、本人確認や日程確認をどの方法で行えるか検討します。

メールで機微情報を無制限に送ってもらう必要はありません。必要最小限の情報で予約し、詳しい相談は安全な方法で実施する案もあります。情報保護と参加しやすさを一緒に設計します。

6. 対話の記録は、対応した結果まで残す

受付日、申出者、本人の意向、困難な場面、提案した方法、選んだ対応、担当者、実施日、見直し日を残します。受付の記録だけで終わらず、「文章で渡したら内容を確認できた」など、本人から分かった結果も追記します。

配慮の情報を全職員へ無制限に配布するのではなく、実施に必要な人へ必要な部分を共有します。次の担当者が「何をすればよいか」を理解できる引継ぎにし、詳細な障害情報を知らなくても対応できる形を目指します。

記録項目残す内容
目的何を利用・理解・参加できるようにしたいか
代替案複数の方法と本人の反応
難しい条件具体的な理由と改善可能性
実施・見直し担当者、実施日、本人が確認した結果

7. 一人への対応を、サービスの改善にも生かす

大きな文字の案内、予約方法の複線化、分かりやすい説明など、複数の方が利用しやすくなる改善もあります。ただし、標準の案内を整えたから個別の配慮が不要になるとは限りません。本人ごとの困り事を改めて確認します。

当事務所は、受付・説明・対話・引継ぎの手順や記録の整理を支援します。雇用の制度や紛争対応が中心になる場合は、それぞれの担当専門職と連携します。

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根拠・参考にした公的資料

制度の説明は下記の公的資料を基にしています。記録・台帳の作り方は当事務所の管理提案です。想定例は受任実績ではありません。

[1] 内閣府・令和6年版障害者白書 第1章

[2] 厚生労働省・雇用分野の差別禁止・合理的配慮

個別の事案では、最新の法令・通知と提出先の取扱いを確認します。

行政書士 角屋敦士

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