109. 会社の「本当の持ち主」をどう説明するか――実質的支配者リストと議決権の整理

資料確認日:2026年10月2日
銀行から実質的支配者の確認を求められた。社長の名前を書けばよいのか、株主名簿を出せばよいのか。代表者と会社を支配する人は、必ずしも同じではありません。実質的支配者リスト制度を使う場合は、法人の種類、議決権の保有関係、添付資料を順に確認します。
この記事の要点
代表者・株主・実質的支配者を分け、申出時点の議決権を資料で説明します。BOリスト制度の対象と、金融機関等が行う本人確認の全体を同じものとして扱いません。
目次
1. 利用できる法人と、確認を求める目的を先に確認
2. 「社長だから」ではなく、議決権の関係を見る
3. 想定例で、境界の読み違いを防ぐ
4. 資料の基準日をそろえる
5. 所有関係の図と、根拠資料をつなげる
6. 提出後も、変更のたびに確認する
7. 相談前の準備と、専門職の分担
1. 利用できる法人と、確認を求める目的を先に確認
法務省のBOリスト制度は、株式会社(特例有限会社を含む)が作成するリストについて登記官が添付書面を確認・保管し、認証文付きの写しを交付する制度です。合同会社や一般社団法人等は対象外です。[1]
金融機関が実質的支配者を確認することと、この制度を利用できることは別です。提出先が必要とする資料と情報の基準日を先に聞き、BOリストの写しだけで必ず口座開設等が完了すると説明しないようにします。
2. 「社長だから」ではなく、議決権の関係を見る
本制度では、原則として議決権の50%を超える保有者を確認し、その該当者がいない場合に25%を超える保有者を検討する仕組みです。「以上」ではなく「超える」という条件に注意します。間接保有や意思・能力に関する例外等もあります。[1]
実務では、登記事項証明書の代表者欄と、株主名簿の保有関係を別々に整理します。単純な株数の割合では説明できない種類株式や議決権の制限等がある場合は、定款等も確認し、一般的な一例をそのまま当てはめません。
3. 想定例で、境界の読み違いを防ぐ
以下は、全株式が同じ議決権を持ち、例外等がないとした想定例です。Aが60%、Bが40%なら、50%を超えるAを確認する段階になります。AとBが50%ずつなら、50%超の者はいないため、次の段階を検討します。
この例を「25%以上の株主は全員記載」と読み替えてはいけません。法人株主がある場合も、持株比率を単純に掛けるだけで結論を出さず、法務省Q&Aの間接保有の条件と構造を確認します。[2]
4. 資料の基準日をそろえる
法務省は、申出日の株主名簿の写し、一定の設立時の公証資料、直前事業年度の法人税申告書別表二等を、内容を証する書面として示しています。リストと資料が一致しない場合には、理由を説明する書面が必要です。[1]
本記事の管理提案は、株式譲渡、増資、相続等の出来事を時系列にし、各資料がいつの状態を表すかを併記することです。古い申告資料だけで現在の保有関係を上書きしないこと、逆に現在の名簿を確認せず昔のリストを再利用しないことが大切です。
5. 所有関係の図と、根拠資料をつなげる
会社が株主になっている場合は、その会社の保有者へたどる図を作ります。会社名、自然人の氏名、議決権の関係、根拠資料の番号を併記し、どの資料からどの線を引いたかを説明できる形にします。これは管理のための提案であり、公式様式の代替とは限りません。
名義と実態が違うという申出がある場合や、議決権の扱いに争いがある場合は、名簿の数字を任意に変えず、その情報と根拠を別に保存します。権利に関する紛争や複雑な会社法の論点は弁護士等へつなぎます。
6. 提出後も、変更のたびに確認する
一度リストの写しを取得しても、その後の株式譲渡や住所等の変更によって、提出時の情報とのずれが生じます。変更が起きたら、提出先への連絡や新たな申出等が必要か、法務局と提出先の案内で確認します。
会社の管理台帳には作成日、申出日、確認した資料、提出先、返却・交付された資料、更新確認の予定を残します。本人情報を含むため、閲覧する担当者を絞り、資金調達の資料一式へ無制限に複製しないようにします。
| 資料 | 確認する目的 |
|---|---|
| 株主名簿・定款 | 議決権と保有者の確認 |
| 譲渡・増資等の資料 | 保有関係が変わった日と内容 |
| 申告・設立時の資料 | 添付書面の条件と情報の整合 |
| 提出先の依頼 | 必要項目、基準日、追加確認 |
7. 相談前の準備と、専門職の分担
株主名簿、定款、登記事項証明書、株式譲渡や増資の資料、提出先からの依頼文をそろえると、問題が名簿の整備なのか、議決権の判定なのか見えてきます。当事務所は会社の資料整理や提出書類に関する相談を支援し、申出代理の取扱い・受任範囲は個別に確認します。
登記は司法書士、権利関係の紛争は弁護士、税務資料の作成・修正は税理士と連携します。制度を利用できるかを確かめた上で、提出先が理解できる証拠のつながりを整えます。
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根拠・参考にした公的資料
制度の説明は下記の公的資料を基にしています。記録・台帳の作り方は当事務所の管理提案です。想定例は受任実績ではありません。
[1] 法務省・実質的支配者リスト制度
個別の事案では、最新の法令・通知と提出先の取扱いを確認します。
行政書士 角屋敦士
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