はまなす行政書士事務所
98. 配偶者居住権で自宅に住み続けるには――権利・修繕費・将来の住替えを一緒に考える

専門記事・実務研究|資料確認日:2026年10月2日
「家は子どもに、住む権利は配偶者に」と分ければ安心でしょうか。配偶者居住権は住まいの確保に役立つ制度ですが、取得の方法、権利の評価、費用負担、その後の生活設計を確認せずに選ぶと、暮らしに合わないことがあります。遺言や遺産分割を考える前に集めたい情報を整理します。
この記事の要点
住む権利の確保だけでなく、修繕と生活の資金、将来の住替えまで比較します。取得要件・登記・税務は、それぞれの専門家の確認とつなげます。
目次
1. 「住み続けたい」の中身を、具体的な生活から確認する
2. 長期の配偶者居住権と短期の保護を取り違えない
3. 所有者と住む人が違うことを、家族が理解する
4. 家賃がなくても、住まいの維持費は残る
5. 登記と税の確認を、文書作成の後回しにしない
6. 住替えや施設入居の場面も、先に話題にする
7. 相談に持参する資料と、判断を止めるべき場面
確認表|よくある疑問
「住み続けたい」の中身を、具体的な生活から確認する
自宅に住みたいという希望にも、終身住みたい、数年後に住み替えたい、売却資金を老後に使いたいという違いがあります。建物の段差、修繕の必要、通院、買物、家族との距離を確かめ、住居の権利だけでなく暮らしの条件を考えます。
今は一人で暮らせても、介護や施設入居で必要なお金が変わる可能性があります。将来売却する選択肢を残したいか、賃貸や同居を考えているかも、権利を選ぶ前に共有しておくと家族の認識の違いが見つかります。
長期の配偶者居住権と短期の保護を取り違えない
配偶者居住権は、相続開始時に被相続人の財産に属する建物に住んでいた配偶者が、一定の要件と取得原因により建物を無償で使用・収益する権利です。遺産分割や遺贈等で取得する制度で、配偶者だから必ず終身の権利が自動発生するわけではありません。[1][2]
配偶者短期居住権は、相続直後の住まいを一定期間保護する別の制度です。短期の保護だけを前提に長期の生活設計をしないようにします。建物の所有関係、共有者、相続開始時の居住状況、遺言の内容を確認し、制度の適用を個別に検討します。
所有者と住む人が違うことを、家族が理解する
想定例として、妻が配偶者居住権を取得し、子が建物の所有権を取得する場合を考えます。子が所有者になっても、直ちに自由に使える建物を取得したのと同じではありません。一方、妻が所有権を取得する場合と、配偶者居住権を取得する場合も異なります。
誰が何を取得するかだけでなく、期間、権利の評価、他の財産の分け方を一緒に検討します。住宅の価値から単純に半分ずつ計算する方法は適切とは限りません。評価が必要な場面では不動産の専門家や税理士の確認につなげます。
家賃がなくても、住まいの維持費は残る
無償で住めることと、住居費が全てなくなることは違います。日常の維持、修繕、建物に関わる費用について制度上の負担と当事者間の取決めを確認します。所有者に課される税と、当事者間で最終的に誰が費用を負担するかの整理も区別します。[1]
確認表には、屋根・外壁・給排水設備などの修繕予定、見積、保険、毎月の生活費を記載します。費用負担の話合いでは、大規模修繕の相談手順や緊急時の連絡先も決めておくと、「必要だと思って直した」と「聞いていない」の行き違いを減らせます。
登記と税の確認を、文書作成の後回しにしない
配偶者居住権を第三者に対抗するための登記は重要な確認事項です。制度を利用する遺言や協議の検討と、登記に必要な資料・手続をつなげて準備します。権利を文書に書いたことで登記まで完了したとは扱いません。[1]
当事務所が行う事実整理や合意文書の準備と、司法書士等が担当する登記、税理士が担当する税務判断は分けます。抵当権等の負担、家族関係、権利評価について疑問が残る場合は、文言を確定する前に関係専門家へ確認します。
住替えや施設入居の場面も、先に話題にする
配偶者居住権は自由に他人へ譲渡できる権利ではありません。第三者に使用させる場合にも制約があるため、将来の賃貸や売却を所有権と同じ感覚で予定しないようにします。[1]
相談前のメモには、住み続けたい期間、今後の同居予定、住替えの希望、修繕費を払える資金、所有権を取得する予定の家族の意向を記載します。「配偶者居住権を使う」と結論を先に決めず、所有権取得や他の財産配分と比較できる状態をつくります。
相談に持参する資料と、判断を止めるべき場面
持参資料は、登記事項証明書、遺言の有無、相続人の関係図、財産の概要、住宅の修繕履歴、住まいと介護の希望です。未取得の資料があっても、どこが未確認か分かるメモから整理を始められます。
家族間で権利の評価や分け方が対立している場合は、行政書士が紛争交渉を代理することはできません。弁護士への相談を優先し、合意ができる段階での資料整理や文書準備を適切な範囲で支援します。
相談前に使える確認表
次の表は、事実と未確認事項を分けるための実務上の整理例です。法定の様式ではありません。
| 項目 | 確認すること | 手掛かりとなる資料 |
|---|---|---|
| 希望する暮らし | 何年、誰と住みたいか | 本人の希望・介護や通院の予定 |
| 所有関係 | 誰が建物を所有しているか | 登記事項証明書・共有関係 |
| 取得方法 | 遺言や協議の内容はどうか | 遺言・遺産分割の資料 |
| 維持費 | 修繕と毎月の費用を賄えるか | 見積・生活費・預貯金の概要 |
| 将来の変更 | 住替えや施設入居を考えるか | 本人・家族の希望と条件 |
よくある疑問
配偶者居住権を使えば、必ず預金も多く残せますか。
権利の評価、他の財産、家族関係と分け方によって異なります。住宅の権利だけを取り出さず、配偶者の生活資金と他の相続人の取得内容を合わせて比較します。
権利を取得した後、家を貸して施設費用にできますか。
所有者の承諾など制度上の制約を確認する必要があります。所有権と同じように自由に貸せることを前提にせず、将来の施設入居を見据えた資金計画を先に検討します。[1]
参考資料
制度上の説明と、記録・確認表等の実務上の提案は区別して記載しています。具体的な対応は最新法令・通知・自治体運用・個別事情を確認してください。想定例と生成画像は、実在の相談者・受任実績を示すものではありません。
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